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使い捨て機器の再使用…滅菌→再製造で費用節約

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使い捨て機器の再使用…滅菌→再製造で費用節約

 

 1回の使用で廃棄している使い捨ての医療機器について、再使用を可能にする国の制度が昨年7月創設されたことを受け、メーカーなど9社が再使用推進のための協議会を設立した。再使用品の活用は医療費の削減や、医療機関の経営改善につながることが期待されているが、普及には時間もかかりそうだ。

  ■厚労省が新制度

 使い捨て機器は現在、患者につけるセンサー類、酸素マスクから、1本20万円もするカテーテルや、1個数万円の特殊な止血用電気メスまで多岐にわたる。

 使い捨ての利点は、感染防止や利便性。しかし使い捨てが増え、それらに費やす医療機関の支出も多くなっている。島根大学病院が2015年度に使い捨て機器購入に使った費用は3億8000万円で、年間材料費の約2割を占めた。同大学副学長で眼科教授の大平明弘さんは「再使用できそうなものも多いが、やむを得ない」と話す。

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 この再使用に道を開いたのが、厚生労働省が定めた「再製造制度」だ。国から許可を受けた業者が、機器を分解して、患者の血液や体液などを洗い流し、病原体をなくす滅菌処理を行った後、再組み立て(再製造)を行う。アメリカでは00年以降、使い捨て機器の再製造が行われ、高価な機器から安価なものまで再使用が行われているという。価格も新品に比べ、大幅に安くなる。

 制度創設を受け、1月に国内外の9社が協議会を設立し、推進の旗振り役を務める。国内の使い捨て機器の年間出荷額1兆5000億円のうち、会員企業のホギメディカル(東京)の推計では、再製造に向いた製品が約1400億円あるという。同社は19年度の事業開始を計画している。

 国内で再製造はどこまで普及するだろうか。東京女子医科大学特任教授の上塚芳郎さんは「カテーテルは構造が単純なので、再製造はしやすい。一方、アメリカの再製造の主力である特殊な止血用電気メスは、再組み立てのノウハウが必要で、ある程度時間がかかるのでは」と話す。

眼科学会、再使用巡り要望

 使い捨ての医療機器はこれまで、一部の医療機関で洗浄・滅菌などの再生処理が行われ、再使用されていた。しかし2017年8~10月、近畿地方の病院で使い捨て機器の再使用が相次いで報じられて問題に。厚生労働省は改めて、再使用をしないように求める通知を出し、再使用は業者による再製造に一本化された。

 この通知を受け、日本眼科学会と日本眼科医会は会員に、使い捨て機器は再使用しないよう周知している。眼科の白内障手術で、水晶体を砕く「超音波チップ」の使い捨て製品が1万5000円程度と高価なため、再使用が多かったという。

 ただ同学会は、メーカー側に要望を行った。普及している使い捨ての超音波チップは、白内障手術装置のトップメーカーの純正品だが、別のメーカーから再使用できるチップも出ている。複数の眼科医によると、使い捨てのチップも再使用可能なチップも大きな違いはないという。同学会の要望はトップメーカーも再使用可能なチップを作ってほしいというものだが、受け入れられなかった。

 東京医療保健大学名誉教授の大久保憲さんは「院内の再生処理では感染リスクがある機器が使い捨てとされるべきだが、必ずしもそうなっていない。使い捨てかどうかを決める国の製造販売の審査では、使用する医師らの意見も取り入れてほしい」と話している。

 (医療部 渡辺理雄、水戸支局 児玉森生)

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