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介護・シニア

祖父母介護、孤立する若者

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支援は手薄、学業断念も

祖父母介護、孤立する若者
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高校生の時から5年間、祖父母の介護をしていたA子さん。「誰にも相談できなかった」と振り返る(東京都内で)

 高齢の親や障害のある家族を介護したり、家事を手伝ったりする若者が相次いでいる。ヤングケアラーと呼ばれ、誰にも相談できないまま、学業や仕事を諦める人も少なくない。だが、支援は手薄で、当事者は孤立しがちだ。

  ■高1から5年間

 「自分が死ねば楽になるかもしれないと思いつめた。二度と戻りたくない」。今春、大学を卒業したA子さん(22)は、高校生から大学まで5年間、実家で祖父母を介護した過去を振り返る。

 高校1年の頃、同居していた祖父のがんが再々発。高校3年の時、今度は、祖母が認知症になり、不可解な言動や 徘徊はいかい を繰り返すようになった。祖父母の世話を引き受けたのは、A子さんだった。父親は海外に単身赴任中で、母親は、精神的に不安定。妹はまだ幼かった。

 介護保険も活用したが、学校との両立は、大変だった。ケアマネジャーの電話には学校の休み時間に対応し、病院には授業を休んで付き添った。食事や弁当も準備した。部活の練習は休みがちになり、2年の時にやめた。祖父の持病が悪化するなどして、救急搬送に同行したことも一度や二度ではない。睡眠不足にもなった。

 担任の「自分の将来を優先して」という言葉がつらかった。「誰かが見ないと祖父母の命が危ないのに……。他に選択肢はなかった」という。

 休み時間に必死で勉強して合格した志望大学も、介護のために断念。地元の大学に進学した。今春から地元の病院で働く予定だ。A子さんは「当時は相談できる人がいなくて孤独だった。ありのままの自分を受け止めてくれる人がいてくれたら……」と振り返る。

  ■進まぬ実態把握

 ヤングケアラーの実態把握をめぐっては、高校生を対象にした調査が、昨秋に公表された。

 大阪歯科大学の濱島淑恵准教授らの研究グループが2016年1~12月、大阪府の公立高校10校、約5200人を対象に実施した。

 回答者のうち、ケアが必要な家族を自分がケアしていると答えたのは272人(5.2%)だった。ケアをする相手は祖母が129人、祖父が61人、母が55人の結果だった。

 ただ、どれだけの若者や子どもが、親らの世話に追われているか、国の実態調査がないのが実情だ。総務省の12年の「就業構造基本調査」は、介護する15~29歳を約17万7600人としているが、調査時期も古く、15歳未満の子ども対象外。ケアの内容や負担の度合いなどは分からないままだ。

 実態把握が進まないことで、教員や介護関係者らの理解が深まらず、若者たちが孤立化している面もある。濱島准教授は「実態把握を進め、教職員や福祉関係者への意識啓発を行う必要がある」と話している。

語り合える場少なく

 介護をする若者同士が悩みを分かち合う集いもある。

 横浜市では月1回、介護をしている若者らが自由に語り合う「横浜ヤングケアラーヘルプネット」が開かれている。

 発起人の一人、高橋瑞紀さん(37)は「当事者同士だからこそ、分かり合えることもある。悩みを話せる場所があることを知ってほしい」と話している。

 ただ、こうした活動はまだ少ない。英国では、未成年の子どもたちを含めて、介護する人への支援が進んでいる。詳しい介護の内容や負担感もチェック。必要な支援を行うことが法律で自治体などに求められている。日本でも、こうした取り組みが必要になりそうだ。

  <ヤングケアラー>  日本で明確な定義はないが、英国では、病気や障害などを抱える家族の世話や介護、精神的なサポート、家事などを行っている未成年の子どもたちのことをいう。きょうだいや親族のケアを担っている場合もある。

 (粂文野)

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