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もっと知りたい認知症

医師と患者はわかり合えないのか? …「ディア・ペイシェント」

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連続36時間勤務…丁寧に対応できなくなる医師たち

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――私はお医者さんに話をよく聞きますが、患者さんや家族にもたくさん取材しています。その経験から、やはり患者さんは、どこかお医者さんに遠慮しているな、と思います。

 群馬大学病院で、手術を受けた患者が相次いで死亡した問題を書いた高梨さんの「大学病院の奈落」で、群馬大学の偉い先生に盾突けないという遺族の話が出てきますが、それに象徴されていると思います。やはり遠慮することはあると思いますね。私は社会人になって別の職業に就き、結婚、出産を経て33歳で医学部に入ったので、そういう気持ちもよくわかります。

 実は医者としては、「こちらに聞いてくれればよいのに」と思うことがよくあります。ただ、ちょっとがっくりくるのは、言葉を尽くして治療法の説明をしても「インターネットにこう書いてあります」と言って、信用してもらえない時です。でも、遠慮する方がいますが、セカンドオピニオンはむしろ受けた方がよいと思います。

――南さんは、お医者さんの立場とそうでない立場の両方からものを見ていますね。

 今、医師の働き方改革が話題になっていますが、私は、当直して翌日も働いて36時間勤務が普通――なんて、研修医の時からおかしいと思っていました。だけど、大学を卒業してそのまま医師になった人には、それがわからないのです。私は、会社勤めの経験があったから疑問に思えたのでしょう。

――病院の医師の勤務が過酷だとはよく聞きます。群馬大学で問題になった執刀医も激務をこなしていたそうです。外科医でなくても、連続36時間勤務とか、それでは誰だって疲れます。精神的にも余裕がなくなって、人間関係にも響きますよね。

 疲労してくると、いろいろなことが丁寧にはできなくなりますね。勤務医の立場では、患者さんを減らしてくださいと言えるような状況にはありません。そんなことを言ったら、やる気のない人間だと思われたり評価が落ちたりするのではないか、と心配になるでしょう。群馬大学の執刀医も、たくさん手術をするしかないという状況に追い込まれていたのかもしれません。

――そんな労働環境では、患者さんと丁寧に向き合うことも難しくなりそうです。「ディア・ペイシェント」では主人公の千晶を、医師である父親が「一方通行では、いい医療はできない」と諭します。あの言葉にはどんな思いを込めていたのですか。

 高齢者医療のあり方を意識していましたが、実際はすべての医療に言えることです。どんな最期を迎えたいかを選ぶ時に、患者さんの気持ちや家族の話をよく聞いて、本人にとって何が一番よいのかを医師も一緒に考えることが大切なのだという思いを込めました。終末期医療は、患者さんだけでなくみとる家族もつらい。セットでケアする気持ちが必要だと思います。

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