心療眼科医・若倉雅登のひとりごと
医療・健康・介護のコラム
【患者学(4)】誰でも患者になる…日本の医療システム作りに欠かせない視点
「初めから親身に聞いてくれていたら」「もう少しきちんと説明していたら」
読者のみなさんには、この医療保険制度を決める過程で、病気の当事者である患者、一般国民の考えが入ってくる余地がなかったことに注意してもらいたいと思います。患者の自己決定権を尊重する「患者中心主義」を実現するには、患者の視点が入ることが不可欠なのです。
日本には、現在、様々な難病に関する患者会がありますが、彼らは、自らが受けている医療の矛盾や問題点を実感しています。私が顧問を務めているいくつかの患者会でも、「医師が初めから、私の訴えを親身に聞いてくれていたら、もっと早く病状の診断ができたのに」などと、医師とのコミュニケーションがうまくいかなかった例をよく聞きます。
私は、いくつかの医療訴訟に鑑定人として関わってきました。一概には言えませんが、「医師の側がもう少し説明していたら、判断ミスなどが生じた過程をきちんと説明していたら、ここまでこじれて紛争にならなかったのではないか」と思うこともありました。
患者や家族、医師が十分にコミュニケーションのとれる仕組みを
誰でも、いつかは患者になるでしょう。だから、誰もが日本の医療現場が抱える矛盾点や問題点に目を向け、患者や家族、医師が十分にコミュニケーションのとれる医療の仕組みにしてゆくべきだと思います。
幸い、終末期医療では、患者、家族、医師が共同で取り組むべき政策や方針が、18年度の診療報酬改定に際して出されました( 終末期患者と対話重ねて…厚労省、医療指針初の改定へ )が、普段の医療現場にそのような環境を作るために、診療報酬改定を持ち込むのはなかなか難しいでしょう。
医師はもちろん、看護師ら医療スタッフなどの多彩な人材、保健センターのような公的施設、医療支援団体も巻き込んで、日本の医療体制を一から考え直す機会が持てないだろうか。私はそんなことを日々思っています。(若倉雅登 井上眼科病院名誉院長)
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