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心療眼科医・若倉雅登のひとりごと

コラム

【患者学(4)】誰でも患者になる…日本の医療システム作りに欠かせない視点

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【患者学(4)】誰でも患者になる…日本の医療システム作りに欠かせない視点

 このコラムでは、これまで3回、患者の自己決定権が尊重されることが大切だと述べてきました。

 実際には「医師が患者の自己決定権をないがしろにしている」という声をよく耳にします。一方で、多くの医師が「患者が決めたことをなかなか示さない」「患者が自己決定してくれない」と悩んでいます。「自分のことは自分で決めてほしい」と言う医師もいます。

 ただ、「患者と医師、どちらが悪いのか」という議論をすることには、ほとんど意味がありません。むしろ、日本の医療システムでは、医師と患者が十分にコミュニケーションを行える環境になっていないことを指摘するべきでしょう。

国、保険組合、医師会が決めてきた医療保険制度

 この問題の背景には、日本の医療保険制度が構築されてきた歴史的要因があると思います。今の国民皆保険制度になるまでの歴史は、ヨミドクターのコラムコーナー 「一緒に学ぼう 社会保障のABC」 に詳しく書かれています。

 日本の医療保険制度は、医師にかかるだけの経済力のない人が大勢いた時代に、医療費をどう賄うかという観点から、国、保険組合、医師会の話し合いの中で決められてきました。つまり、今日の日本の医療システムは「医療費」という経済的な視点で整備されてきたと言えるのです。

 戦後になって、患者の権利を重視した欧米型の医療理念が次々に輸入されました。それはよかったのですが、国と医師会の医療費を中心とした議論の中では、こうした理想を実現するための制度設計はほとんど議論されなかったのではないかと思います。

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201505_第4回「読売医療サロン」_若倉

若倉雅登(わかくら まさと)

井上眼科病院(東京・御茶ノ水)名誉院長
1949年東京生まれ。北里大学医学研究科博士課程修了。グラスゴー大学シニア研究員、北里大学助教授、井上眼科病院副院長を経て、2002年から同病院院長。12年4月から現職。日本神経眼科学会理事長、東京大学医学部非常勤講師、北里大学医学部客員教授などを歴任し、15年4月にNPO法人「目と心の健康相談室」を立ち上げ副理事長に就任。「医者で苦労する人、しない人---心療眼科医が本音で伝える患者学」、「健康は眼に聞け」「絶望からはじまる患者力」(以上春秋社)、「目の異常、そのとき」(人間と歴史社)、医療小説「茅花流しの診療所」(同)など著書多数。専門は、神経眼科、心療眼科。予約数を制限して1人あたりの診療時間を確保する特別外来を週前半に担当し、週後半には講演・著作活動のほか、NPO法人、患者会などでのボランティア活動に取り組む。

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