心療眼科医・若倉雅登のひとりごと
医療・健康・介護のコラム
【患者学(4)】誰でも患者になる…日本の医療システム作りに欠かせない視点
このコラムでは、これまで3回、患者の自己決定権が尊重されることが大切だと述べてきました。
実際には「医師が患者の自己決定権をないがしろにしている」という声をよく耳にします。一方で、多くの医師が「患者が決めたことをなかなか示さない」「患者が自己決定してくれない」と悩んでいます。「自分のことは自分で決めてほしい」と言う医師もいます。
ただ、「患者と医師、どちらが悪いのか」という議論をすることには、ほとんど意味がありません。むしろ、日本の医療システムでは、医師と患者が十分にコミュニケーションを行える環境になっていないことを指摘するべきでしょう。
国、保険組合、医師会が決めてきた医療保険制度
この問題の背景には、日本の医療保険制度が構築されてきた歴史的要因があると思います。今の国民皆保険制度になるまでの歴史は、ヨミドクターのコラムコーナー 「一緒に学ぼう 社会保障のABC」 に詳しく書かれています。
日本の医療保険制度は、医師にかかるだけの経済力のない人が大勢いた時代に、医療費をどう賄うかという観点から、国、保険組合、医師会の話し合いの中で決められてきました。つまり、今日の日本の医療システムは「医療費」という経済的な視点で整備されてきたと言えるのです。
戦後になって、患者の権利を重視した欧米型の医療理念が次々に輸入されました。それはよかったのですが、国と医師会の医療費を中心とした議論の中では、こうした理想を実現するための制度設計はほとんど議論されなかったのではないかと思います。
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