いちばん未来のシニアのきもち
医療・健康・介護のコラム
食べることは、生きること
こんにちは、慶成会老年学研究所の宮本典子です。
高齢者は、超高齢社会のいちばん先をいく人たちです。共に生きやすい社会をつくることは、次の世代の未来をつくることになると思いませんか?
鮮明な「食」の思い出
高齢の方に思い出の食べ物について話してもらうと、多種多様な答えが返ってきます。
「疎開先で食べた畑のキュウリのみずみずしさが忘れられない、あんなにおいしいキュウリは、それ以来食べたことがない」
「家が豆腐屋でね。固まる前の豆腐を、おやじが茶碗にすくって『はいよ!』って渡してくれた。その味は格別だった」
「白いご飯の日は、『銀しゃりだ!』と家中がはしゃいだ気分になるのです」
「引き出物のおまんじゅうを、父親が結婚式から持ち帰るのを、兄弟そろって待ち構えていました。甘い物が少なかったから、均等に分けてもらえるかかたずをのんで見守って…。口に入れた時の幸せと、口の中で消えていく寂しさを同時に味わいました」
私たちが当たり前に食べている白いごはんや甘いお菓子が、どれも特別でおいしそうに聞こえるから不思議です。食べ物の少ない時代に生まれ育ったからこそ、格別の思い出があるのですね。
年をとると、食べる力にも衰えが出る
いつまでもおいしい食事を楽しみたい――。誰もが望むことですが、高齢になると食べるのに必要なかむ力、飲み込む力は低下します。
105歳になった私の祖母は、現在施設で暮らしています。施設では、飲み込む力やかむ力に低下が見られると、それに合わせて作り方を調整します。祖母には、きざみ食が提供されています。
きざみ食は食べ物を小さく刻んで食べやすくした食事です。ブリの照り焼きが出てきても、刻んであるため、何の魚かわかりません。ちょっと残念ですが、安全のために必要なこと。一人ひとりの状態を把握して、手間ひまをかけて介護食を作るスタッフの皆さんに、頭が下がる思いです。
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妻が亡くなったときの体重は38キロ台でした。リハビリ病院に転院して、巡回している歯科医に「歯を直しましょう」と言われました。入院間にも歯医者に行っていたのですが、保健の利かない入れ歯を何度も作らせました。30万円ですと言われ、入れたのですが、しっかり噛める歯ではありませんでした。微調整を繰り返していましたが、物が挟まるのを嫌って、食が細くなっていきました。体力は落ちる結果になったのです。どんなに柔らかい物でも、入れ歯の間に狭まれば痛いのです。その歯科医は高齢者でした。考え方も技量も古く、むかし収得した技術に頼っていたのです。患者は永いこと通わなくてはなりませんでした。いま思えば、早く見限って、確かな歯科医を探すべきでした。いえ、甥が歯科医をしているので連れて行くべきだったのです。
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