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その医療 ホントに要りますか?

医療・健康・介護のコラム

抗うつ薬は8割の患者に無意味!?

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 うつ病の人が増えています。うつ病の治療薬である「抗うつ薬」も、たくさん使われるようになりました。ところが、8割の人には抗うつ薬は役に立たないといいます。一体どういうことでしょうか。

処方は急増…でも効果は限定的

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 うつ病は、気分がひどく落ち込む(抑うつ)、好きなことでも興味がわかない、何事にも意欲が起きない、といった状態になる病気です。眠れない、食欲がない、疲れやすいといった身体的な症状も表れます。

 日本では、SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)と呼ばれる新しい抗うつ薬が1999年に発売され、よく使われるようになりました。従来の薬に比べて副作用が少ないとされたためで、抗うつ薬の販売額は10年足らずの間に5倍以上に急増しました。うつ病で治療を受ける人も約100万人と、それまでの2・5倍に増えました。

 しかし、抗うつ薬の効果はそれほど大きくありません。

 2010年、米国ペンシルバニア大学の研究チームが、「うつ病の症状が軽いか中程度の場合、抗うつ薬には効果がみられない」と報告しました。この研究では、抗うつ薬を使った患者と、有効成分を含まない偽薬(プラセボ)を飲んだ患者の回復度を比較した6件の臨床試験データが解析されました。症状の重さによって、「軽症・中等症」「重症」「最重症」の3グループに分けたところ、軽症・中等症や重症のグループでは、抗うつ薬はプラセボに比べて患者の回復度に差がなかったのです。有効性が認められたのは、最重症のグループだけでした。

「効いているのは5人に1人」

 それ以前にも、抗うつ薬の効果が限定的なことを示す研究は少なくありませんでした。1995年には、米国の精神科医が、SSRIの一種セルトラリンと、プラセボを比較。セルトラリンでは、うつ症状が改善した人の割合は60%だったのに対し、プラセボでも42%の人が改善したと報告しました。実際に抗うつ薬が効いた割合は、プラセボとの差である20%足らずだったわけです。

 独協医科大学埼玉医療センターこころの診療科の井原裕教授は「抗うつ薬が本当に効いているのは、うつ病の5人に1人。残りの8割の人には、薬は無意味です」と言います。

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田中秀一 (たなか・ひでかず)

 医療情報部(現医療部)、社会保障部、論説委員、編集局デスクを経て現職。長期連載「医療ルネサンス」を18年担当、現代医療の光と影に目を凝らしてきた。「納得の医療」「格差の是正」をテーマとしている。

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7件 のコメント

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ネコ

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「うつ病の治療は、薬物療法より生活習慣の改善の方が重要」と言われていますが、かなり一般論ですよね…。私は睡眠8時間、ウォーキングを毎朝30分の規則正しい生活をしても、好きだった仕事にやる気が出ず、精神科医に抗うつ剤を処方されました。初めは薬に対する抵抗があって、拒否しているうちに、ウォーキングもできない状態にまで悪化しました。抗うつ剤で元の生活が取り戻せるほどに回復したわけではありませんが、またウォーキングができるようになりました。抗うつ剤を拒否している間にうつが悪化することもあり、そうなると規則正しい生活を送ることも困難になりうるので、生活習慣の改善が抗うつ剤に取って代わるとまでは言えないのではないでしょうか?

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