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福島の介護施設、担い手不足

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運営再開8割、入所者数は制限

福島の介護施設、担い手不足

再開したヨッシーランドでは、職員不足から100床のうち60床が空いたままだ(福島県南相馬市で)

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※各年4月時点

 ◇震災7年

 東日本大震災の被災地・福島県の介護施設が、深刻な担い手不足に苦しんでいる。地震による津波と東京電力福島第一原発の事故で被災した介護施設の再開が進む一方、職員を十分に確保できず、高齢者の受け入れを制限せざるを得ない状況も起きている。

 福島県によると、被災した34施設のうち、約8割の27施設(今年1月1日現在)が運営を再開。津波で全壊した南相馬市の老人保健施設「ヨッシーランド」は昨年12月、6年9か月ぶりに受け入れを始めた。ただ、稼働しているのは全100床のうち40床。「満床にするには、今いる62人の職員に加えて、三十数人を採用する必要があるが、メドが立たない」。池田幸事務長(65)は打ち明ける。現在は69~102歳の計29人が入所している。

 海から約2キロ離れていた施設には震災当時、リハビリや医療的なケアが必要な高齢者約130人がいた。36人が亡くなり、職員1人は今も行方不明のままだ。

 旧施設から内陸に約6キロの山林を切り開いた約2万平方メートルの土地で、再建に向けた動きが本格化したのは2016年。震災前に働いていた職員約80人に再開を知らせるはがきを送ったが、復帰したのは5人だった。「10人は戻ってくると考えていたが甘かった」と池田さん。6年近い歳月が流れ、当時の職員の多くは、避難先で仕事を見つけ、新たな生活を築いていた。

 それでも諦めず、東京都や神奈川県などからも職員を募り、ようやく再開にこぎ着けた。ただ、ベッドをフル稼働できない現状では月に数百万円の赤字が生じる。「今後も職員を集め、一人でも多く受け入れたい」と池田さん。21年度末の黒字化を目指しているという。

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 国勢調査によると、同市の65歳以上人口の割合は32.5%(15年)。震災前(10年)よりも5.9ポイント増えた。「3世代同居世帯も多い地域だったが、老夫婦だけが街に戻るケースが増えている」と同市の担当者は指摘する。

 被災した介護施設が集中する福島県沿岸の相双地区では、介護職の有効求人倍率は3.52倍(17年4月現在)と全国平均(3.13倍)より高く、介護の担い手不足は今後さらに深刻化する恐れもある。

 介護職不足だけではない。施設運営を支えるインフラも足りない。4月に再開予定の同市の特別養護老人ホーム「梅の香」の担当者は、「3食を提供するのに欠かせない給食業者が戻ってこない」と頭を痛める。「ただでさえ少ない職員が、介護をしながら食事の用意もしなくてはいけない」という。同施設では当面、全50床のうち20床の稼働にとどめる。

 原発事故による避難指示が解除された区域で深刻化している人手不足に対応するため、国は18年度予算に対応策を盛り込んだ。

 具体的には、避難指示解除区域内の施設に、都市部の施設が職員を派遣した場合、家賃や帰省費などを補助する制度を設ける。県外などから同区域内の施設に就職する人に対する準備金も、現在の30万円から50万円に上げる。ただ、こうした支援策も、根本的な解決策にはならない。「若者を含めた多くの人に、介護の仕事に関心を持ってもらえるよう、取り組みを続けていくしかない」(福島県高齢福祉課)という。

宮城、岩手でも人材争奪戦

 宮城と岩手の両県では、津波で被災した介護施設の再開が完了した。ただ、課題はやはり人手不足だ。

 被害を受けた介護施設は、宮城県で198施設、岩手県で34施設。このうち、廃止した岩手県の1施設を除き、今年2月までに全ての施設が再開した。しかし、福島県沿岸部と同様、石巻市や気仙沼市など、津波で大きな被害を受けた宮城県沿岸部でも、介護職の有効求人倍率が2倍を超え、人手不足が深刻化している。「震災の影響で、働き盛りの層が流出したことが大きい」(県長寿社会政策課)という。

 また、県内で人材の奪い合いになりそうな状況も起きている。仙台市では、高齢化による介護ニーズの増加を見込んで介護施設が急増。それに伴い、求人も増えているためだ。同市の介護職の有効求人倍率は4.54倍(昨年4月)。「被災した沿岸部の人材確保がより厳しくなりかねない」との懸念も出ている。

 (板垣茂良)

 (2018年3月11日 読売新聞朝刊掲載)

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