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帰還の不安、継続支援必要

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アルコール依存、うつ深刻 福島

帰還の不安、継続支援必要

福島県富岡町に昨年末開設された「ふくしま心のケアセンター」。他の支部と兼務の職員が多く、全員そろうことは少ない

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 ◇震災7年

 東日本大震災からまもなく7年。東京電力福島第一原発事故による避難指示が相次いで解除され帰還が進むなど、環境が急激に変わる福島県で、アルコール依存やうつなどの心の問題が深刻化している。専門家からは、継続的な支援の必要性を訴える声があがる。

  ■自殺者再び増加

 「最近の体調はどうですか。ちゃんと眠れていますか?」。2月中旬、福島市の福島県立医大の一室で、保健師や臨床心理士ら約15人のスタッフが、一斉に電話に向かっていた。県が、原発事故の避難指示区域など13市町村の住民を対象に、2011年度から行っている電話支援だ。

 毎年1回、生活習慣や体調を尋ねる健康調査を郵送で行い、回答結果から、うつなどが心配される人に電話で状況を聞く。1人当たり15分~1時間。必要があれば、医療機関を紹介し、自治体とも情報を共有する。16年度は、約3000人に電話支援を行った。担当の看護師、 音地おんじ 美穂さんは「新たに体調を崩す人が毎年一定数いて、件数は大きくは変わらない。全員が医療機関を受診できるまでフォローを続ける」と説明する。

 同県では、震災関連の自殺者数が、13年以降減少傾向にあったが、17年に再び増加。県の健康調査では、回答者の7%にうつなど精神的な不調の可能性があった。全国平均の3%より2倍以上高い。

 調査を担当する県立医大の前田正治主任教授は、「避難先でいったん落ち着いた生活環境が、この1~2年で再び急激に変わったことが影響している」と話す。県内では17年春、富岡町など4自治体で、帰還困難区域以外の避難指示が解除され、原発に近い双葉地方への帰還が進む。避難指示区域外からの自主避難者への家賃補助も終了した。

 前田主任教授は「帰還か移住かの決断を迫られ、転居で環境が変わるストレスは大きい。今後ますます、不調を抱える人が増えるのではないか」と心配する。移住を決め自宅を新築した直後に、自殺した人もいたという。

  ■ケアセンター開設

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 被災者の心のケアのため、県精神保健福祉協会は12年、「ふくしま心のケアセンター」を開設し、県内5か所の支部で訪問支援などを行っている。最近増えているのが、アルコール依存など飲酒の問題だ。同センターの渡部育子さんは、「中高年の独居の男性は特にリスクが高い。避難先になじめなかったり、震災で仕事を失ったりしたことで飲酒量が増えている」と指摘する。

 太平洋沿岸の相馬地方で一人暮らしをする50歳代男性は、原発事故後、仮設住宅に入居し、飲酒量が増加。毎日、缶ビール5~6本を空け、泥酔して騒いだり、ごみに火をつけたりと問題を起こすようになった。

 近隣住民から退去を求められ、14年秋、同センターが支援に入った。職員が男性宅を訪れて話を聞き、入院や断酒を勧めると同時に、住民の集いの場に誘ったり、運転免許を取る勉強を一緒にしたりと関係性を深めてきた。男性は約2年かけて断酒することができ、今は、スタッフの支援で就職活動中だという。

 帰還が進められるなか、環境の変化や孤独などでこうした人が増えるとみて、同センターは17年末、富岡町に出張所を開設した。現在、避難先で同センターの支部の支援を受けている人が双葉地方に戻った後、出張所が支援を引き継ぐ。

 ただ、課題は多い。双葉地方では、精神科病院の多くが休診したり病床数を減らしたりしており、連携できる医療機関が少ない。同センターには精神保健福祉士や看護師などの専門職が必要だが、双葉地方で働く人は少なく、人材の取り合いになっている。同センターが復興予算で行う単年度事業で、常設の組織でないことも問題だ。

 渡部さんは「人手不足で職員の入れ替わりが多いうえ、長期的な計画も立てにくい。継続的な支援ができる態勢を整えてほしい」と訴える。

 (小沼聖実)

 (2018年3月9日 読売新聞夕刊掲載)

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