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僕、認知症です~丹野智文44歳のノート

コラム

車と私、車と認知症(下)認知症だと運転が危ない?

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スコットランドでは、交通の歴史をテーマにしたリバーサイド博物館も見学しました。貴重なクラシックカーなども展示されていて、車好きの私は大興奮でした

スコットランドでは、交通の歴史をテーマにしたリバーサイド博物館も見学しました。貴重なクラシックカーなども展示されていて、車好きの私は大興奮でした

スコットランドでは実地試験合格で免許更新

 私は16年と17年にスコットランドを訪問して、認知症をとりまく社会状況や支援制度などを見学し、現地の当事者と交流しました。スコットランドでは、認知症と診断された場合、路上などで実地試験を受けて合格すれば、免許を更新できるのだそうです。

 50代の若年性認知症の男性は、車を運転する生活を愛し、自立して生きる誇りを持っていました。「出かける時は送ってもらうこともできるけれど、運転免許は、私にとってとても重要なもの。それを失うのは、魂の一部をもぎ取られる感じです」と話していました。それを聞いて私も、自分が免許を手放した時のことを思い出し、涙があふれてしまいました。

買い物、通院…生活のための「制限付き免許」

 私が住んでいる仙台市は、電車やバスなどの公共交通機関が発達していますが、地域によっては、車を運転できなくなると生活が立ちゆかないという人もいるでしょう。

 認知症の人が車を使う目的として一番多いのは、買い物だと思います。住んでいる場所にもよると思いますが、自宅から数キロ程度の範囲で運転ができれば、生活するには十分なのではないでしょうか。

 日本でも、認知症の人には定期的に実地試験を課して、合格した場合のみ免許を更新するようにしてはどうでしょうか。通い慣れた近所の道なら安全に運転できるという場合は、通院や買い物の範囲に限って運転を認めることもできると思います。

 近年は、衝突防止システムなど、安全運転をサポートする機能がついた車も増えています。視力の弱い人でも、眼鏡をかければ免許を取ることができますし、障害のある人が、特別な器具を使って運転する場合もあります。同じように、高齢者や認知症の人に対しては、安全運転の機能を備えた車に限定して、免許を更新することを検討してもよいのではないでしょうか。ただし、車は高価なものですから、そうした制限を設けるならば、補助金などで買い替えを支援する必要もあると思います。

 障害や病気の有無にかかわらず、人間は間違う生き物です。自動車の機能だけでなく、道路のデザインや標識、交通ルールなども改善を重ね、間違いを防いで安全運転を助ける工夫を広げていけば、みんなが暮らしやすくなるのではと期待しています。(丹野智文 おれんじドア実行委員会代表)

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丹野智文(たんの・ともふみ)

 おれんじドア実行委員会代表

 1974年、宮城県生まれ。東北学院大学(仙台市)を卒業後、県内のトヨタ系列の自動車販売会社に就職。トップセールスマンとして活躍していた2013年、39歳で若年性アルツハイマー型認知症と診断を受ける。同年、「認知症の人と家族の会宮城県支部」の「若年認知症のつどい『翼』」に参加。14年には、全国の認知症の仲間とともに、国内初の当事者団体「日本認知症ワーキンググループ」を設立した。15年から、認知症の人が、不安を持つ当事者の相談を受ける「おれんじドア」を仙台市内で毎月、開いている。著書に、「丹野智文 笑顔で生きる -認知症とともに-」(文芸春秋)。

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