いのちは輝く~障害・病気と生きる子どもたち 松永正訓
医療・健康・介護のコラム
家に連れて帰りたい――13トリソミーの子(3)わが子との108日間 「一日一日が大切」
桜ちゃん(仮名)が母の胎内にいた時、超音波検査で次々と異常が見つかりました。口唇口蓋裂・右肺のう胞 ・左腎のう胞・横隔膜ヘルニア・心奇形。心奇形はとても複雑で、両大血管右室起始・肺静脈還流異常・左心室低形成・心房中隔欠損・心室中隔欠損という病名が並びました。両親にとっては初めて聞く言葉ばかりでした。
医師は「治療のアイデアが浮かばない」
産科の先生の言葉は、大変厳しいものでした。
「心臓の奇形が深刻で、生まれてきても蘇生できないかもしれない。いや、妊娠の継続も難しいと思います」
そして羊水検査による染色体の出生前診断を勧められました。しかし夫婦はどんなに障害を持っていても桜ちゃんを産んで育てるつもりでした。検査には流産のリスクがあるので、受けないことにしました。
小児循環器の先生は、超音波で桜ちゃんの心臓を見ながら「治療のアイデアが浮かばない」とつぶやきました。この言葉に母親は絶望的な気持ちになりました。
しかし、桜ちゃんは母の胎内で生き続けました。そして妊娠38週を迎えます。骨盤位(逆子)だったために、桜ちゃんは帝王切開で生まれました。呼吸状態は極めて悪く、全身がチアノーゼでした。医師たちは桜ちゃんに気管内挿管をし、肺の中に酸素を送り込みました。
口唇口蓋裂のわが子 一目見て「かわいい!」
新生児集中治療室(NICU)に入り全身を検査すると、胎児超音波検査では分からなかった多指症と脳内出血があることがわかりました。
帝王切開の手術から回復した母親は、夫と一緒にNICUへ桜ちゃんに会いに行きます。口唇口蓋裂があることはすでに胎児超音波検査で分かっていましたので、もし、 かわいいと思って接することができなかったらどうしようと不安でした。しかし、桜ちゃんの顔を一目見ると、さっと心が晴れました。夫婦そろって「かわいい!」と声をあげたのでした。生まれてからおこなった検査によって染色体異常の13トリソミーであることも明らかになりました。
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