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強制不妊、旧厚生省が積極手術促す…自治体に文書「違憲ではない」強調

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強制不妊、旧厚生省が積極手術促す…自治体に文書「違憲ではない」強調

旧厚生省が都道府県に出した通知の写し

 旧優生保護法に基づき知的障害者らが不妊手術を強制された問題で、旧厚生省が同法施行翌年の1949年と57年、都道府県に対し、強制手術が違憲ではないことを強調し、積極的に手術することを促す文書を送付していたことが、わかった。専門家は「被害者の救済とともに、人権を無視した強制手術の実態を徹底して調査するべきだ」と指摘している。

 2通の文書は京都府立京都学・歴彩館に保管されていた。49年に旧厚生省公衆衛生局長名で出された文書では、不妊手術を強制することについて、「強制優生手術を行うには医師により『公益上必要である』と認められることが前提で、決して憲法の精神に背くものではない」と明記。憲法13条(幸福追求権)に反しないことを強調していた。

 また、手術が必要だと判断した審査会の決定が確定すれば、「本人が手術を受けることを拒否した場合にも手術を強行できる」とし、やむを得ない場合に限り、身体拘束なども認められるとしている。

 57年の旧厚生省公衆衛生局精神衛生課長名の文書では、手術件数が増えているものの、同省が確保した予算上の件数を下回っていると指摘。都道府県ごとの強制手術件数を示し、「実施件数が極めて不均衡」としたうえで、「関係者に対する 啓蒙けいもう 活動と貴職の御努力により相当程度成績を向上せしめ得られるものと存ずる」などと積極的な手術を促していた。

 しかし、旧優生保護法は人権上問題があるとして96年、母体保護法に改正され、強制不妊手術の条文などは削除された。

 同法に詳しい藤野豊・敬和学園大教授は「国会や厚生労働省は当時、国や自治体が積極的に政策を推し進めていた事実を重く受け止める必要がある。この問題に無関心だった社会のあり方も含めて早急に検証し、国は補償を検討すべきだ」と話している。

「早く救済措置講じて」

 強制手術を受けた人らからは早期の救済を望む声が上がっている。

 全国で2例目となる国家賠償請求訴訟を仙台地裁に起こすことを決めた仙台市の70歳代の女性は6日、取材に応じ、「手術を受けた人たちは高齢化している。できる限り早く救済措置を講じてほしい」と訴えた。

 女性は中学3年の頃、民生委員の指導で親元を離れて市内の知的障害児が通う施設に移り、16歳の時、事前の説明もないまま不妊手術を受けた。後に、両親が「不妊手術を受けた」と話しているのを聞き、事実を知ったという。東京で就職して結婚もしたが、子供を産めないことに引け目を感じ、離婚したという。

 1960年代に勤務していた東京都立病院で優生保護手術の申請に関わったという精神科医の岡田靖雄さん(86)(東京都杉並区)も「立法による救済を急ぐ必要がある」と話す。

 同病院では年に数回、医局の黒板に不妊手術が必要な患者を書きだすよう通知があり、30歳代ぐらいの女性の手術の申請に関わり、不妊手術にも立ち会ったという。

 岡田さんは「当時、自身を含めた多くの医師が疑問を持たず、差別的な制度に加担してしまった」と振り返り、「審査の過程も含め、問題点を明らかにすべきだ」としている。

救済目指す超党派議連が発足

 旧優生保護法下の強制不妊手術問題で、議員立法などによる救済を目指す超党派の議員連盟が6日、国会内で設立総会を開いた。

 設立総会には自民、公明、立憲民主などの衆参両院議員約20人が参加した。会長には自民党の尾辻秀久・元厚生労働相が就いた。不妊手術を強制された人などからヒアリングを行い、具体的な支援策を検討する。

 読売新聞の調査では、手術を強制された1万6475人のうち、個人を特定できる資料は約2割しか残っておらず、実態の把握が課題だ。勉強会では、出席した議員から、政府に実態調査を求める声が相次いだ。厚労省は「関係省庁としっかり協議して対応する」と回答した。

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