文字サイズ:
  • 標準
  • 拡大

認知症介護あるある~岡崎家の場合~

コラム

孫との再会で号泣! 実は昨日も会ってます…

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • チェック
漫画・日野あかね

漫画・日野あかね

「キレ期」を経て「ウルウル期」に

 認知症になると、感情のコントロールが難しくなるようです。それは認知症の父さんを見ていると、すごくよくわかります。

 元気なころの父さんは仏頂面であまり感情を表に出すタイプの人ではありませんでした。母さんとケンカをしてもダンマリを決め込み、「まったく、何を考えているんだか!」と言われる感じです。

 ところが脳血管性認知症だとわかったばかりのころ、父さんは俗にいう“キレやすい”キャラに変わってしまいました。常にイラつき、ちょっとしたことでも怒りが大爆発。当時はまだ脳血管性認知症に対する知識が少なかった私や母さんも一緒になってキレては、派手にケンカをすることも少なくありませんでした。

 そして体力的にも精神的にもキレる元気がなくなった今、父さんは常に目がウルウルしている、ひどく涙もろい人になってしまいました。それは「涙腺が壊れているんじゃないの?」と母さんに言われるほどです。

 うれしくても、怒りに震えても、悲しくても、面白くても、涙を流し、鼻をズルズルさせています。とにかく脳血管性認知症により“感情豊かな涙腺”になってしまったようなのです。

 こんなふうに、ちょっとしたことでも激怒したり、大泣きしたりするのは、認知症により、感情をコントロールする脳の働きが低下するためと聞きました。特に父さんのような脳血管性認知症でよくみられる症状で、専門的には「感情失禁」という何だかすごい用語で呼ばれているのだそうです。

涙腺崩壊のじいちゃんとクールな4歳児

 父さんの“感情豊かな涙腺”はデイサービスの帰りを出迎えてくれる孫のたー君のひと言で、うれしさから毎度、大崩壊を起こします。「じいちゃん、お帰りー!」の最初の「じ」が聞こえたあたりから、父さんは大号泣。「岡崎さん、久しぶりにお孫さんに会ったのですか?」と、何も知らない新入りのデイサービスのスタッフさんから質問されるほどです。とにかく父さんの中で毎回、“孫との感動の再会シーン”が繰り広げられるのです。 

 一方、うれし泣きをする父さんの手を引き、「じいちゃん、家に帰ったら手を洗って、うがいをした方がいいよ」と冷静沈着に洗面所まで誘導するたー君。この温度差は何でしょう……。まぁ、これも岡崎家ではお 馴染(なじ) みの「認知症介護あるある」なワンシーンなのです。

感情豊かな父さん…周りは大変だけど、きらいじゃない

 父さんが涙もろくなったことに伴い、困りごとがひとつ増えました。それはティッシュペーパーがすごい勢いでなくなることです。

 父さんは、涙を拭き、鼻をかむためにテーブルの上にティッシュペーパーを置いています。感動的なテレビ番組が始まり、その番組が終わるころにはひと箱が空になっていることもしばしばです。そして、私は母さんに頼まれて毎度ドラッグストアまでティッシュペーパーを買いに走るのです。 

 脳血管性認知症により、感情がとめどなくあふれ出すようになった父さん。孫と温度差があっても、大号泣のせいでティッシュペーパーを買いに走らされても、私は仏頂面で何を考えているかわからなかった元気だったころの父さんよりも、今の“感情豊かな涙腺”ですぐに号泣してしまう父さんがきらいではないのです。これも私にとっての「認知症介護あるある」なのです。(岡崎杏里 ライター)

登場人物紹介はこちら

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • チェック

column_aruaru-200re

認知症介護あるある~岡崎家の場合~

岡崎杏里(おかざき・あんり)
 ライター、エッセイスト
 1975年生まれ。23歳で始まった認知症の父親の介護と、卵巣がんを患った母親の看病の日々をつづったエッセー&コミック『笑う介護。』(漫画・松本ぷりっつ、成美堂出版)や『みんなの認知症』(同)などの著書がある。2011年に結婚、13年に長男を出産。介護と育児の「ダブルケア」の毎日を送りながら、雑誌などで介護に関する記事の執筆を行う。岡崎家で日夜、生まれる面白エピソードを紹介するブログ「続・『笑う介護。』」も人気。

hino-117-fin

日野あかね(ひの・あかね)
 漫画家
 北海道在住。2005年にステージ4の悪性リンパ腫と宣告された夫が、治療を受けて生還するまでを描いたコミックエッセー『のほほん亭主、がんになる。』(ぶんか社)を12年に出版。16年には、自宅で介護していた認知症の義母をみとった。現在は、レディースコミック『ほんとうに泣ける話』『家庭サスペンス』などでグルメ漫画を連載。看護師の資格を持ち、執筆の傍ら、グループホームで介護スタッフとして勤務している。

認知症介護あるある~岡崎家の場合~の一覧を見る

コメントを書く

※コメントは承認制で、リアルタイムでは掲載されません。

※個人情報は書き込まないでください。

必須(20字以内)
必須(20字以内)
必須 (800字以内)

編集方針について

投稿いただいたコメントは、編集スタッフが拝読したうえで掲載させていただきます。リアルタイムでは掲載されません。 掲載したコメントは読売新聞紙面をはじめ、読売新聞社が発行及び、許諾した印刷物、ヨミウリ・オンライン(YOL)、携帯電話サービスなどに複製・転載する場合があります。

コメントのタイトル・本文は編集スタッフの判断で修正したり、全部、または一部を非掲載とさせていただく場合もあります。

次のようなコメントは非掲載、または削除とさせていただきます。

  • ブログとの関係が認められない場合
  • 特定の個人、組織を誹謗中傷し、名誉を傷つける内容を含む場合
  • 第三者の著作権などを侵害する内容を含む場合
  • 企業や商品の宣伝、販売促進を主な目的とする場合
  • 選挙運動またはこれらに類似する内容を含む場合
  • 特定の団体を宣伝することを主な目的とする場合
  • 事実に反した情報を公開している場合
  • 公序良俗、法令に反した内容の情報を含む場合
  • 個人情報を書き込んだ場合(たとえ匿名であっても関係者が見れば内容を特定できるような、個人情報=氏名・住所・電話番号・職業・メールアドレスなど=を含みます)
  • メールアドレス、他のサイトへリンクがある場合
  • その他、編集スタッフが不適切と判断した場合

編集方針に同意する方のみ投稿ができます。

以上、あらかじめ、ご了承ください。

最新記事