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初めての介護

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[初めての介護](11)介護保険で自宅改修

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手すり設置や段差解消など

[初めての介護](11)介護保険で自宅改修

男性宅のリフォームを担当したフレッシュハウス横浜西営業所の渡辺健太さん。「手すりを付ける位置は、体の状態や利用する状況を考慮し、入念に打ち合わせをして決めた」と話す

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 転倒防止などを目的としたリフォーム(住宅改修)は、条件を満たせば介護保険の支給対象になり、自己負担を抑えられる。住み慣れた自宅で、長く暮らし続けることを可能にするサービスだが、対象となる工事や利用限度額が定められているため、十分な検討が必要だ。

 「浴槽から出る時に手すりで体を支えられ、立ち上がりやすい」。昨年11月、介護保険を使って浴室をリフォームした横浜市旭区の男性(79)は笑顔で話す。

 1年半前、バスに乗ろうと急いだ際に転び、右腕を骨折した。リハビリも続けたが、利き腕は高く上がらなくなり、力もあまり入らない。要介護認定を受けると、「要支援2」だった。

 足腰に不安もあり、転倒予防のため、浴室に手すりを設置。約10センチあった脱衣所との段差もなくし、床もタイル張りから滑りにくい素材に替えた。手すりは、トイレや玄関にも付けた。

 男性宅の工事を手がけたリフォーム会社「フレッシュハウス」(横浜市)の鈴木康裕・総合企画課次長は「介護保険を使ったリフォームは、『手すりの取り付け』が最も一般的。立ったり、座ったりするトイレや浴室、玄関などへの設置が転倒予防に有効」と話す。廊下や居室内、玄関先に付けるケースも多いという。

 廊下と居室の高さを合わせたり、玄関先にスロープを造ったりする「段差の解消」や「引き戸への交換」なども介護保険の対象だ。こうしたリフォームを組み合わせて室内の移動や外出がしやすくなれば、介護が必要な高齢者の自立支援につながる。介護する家族らの負担も軽減できる。

 ケアマネジャーらが作成する「住宅改修が必要な理由書」など、工事の前後に必要書類を市区町村に提出することで、対象となるリフォーム代の9割(所得の高い人は8割)が介護保険から還付され、1割(同2割)の自己負担で済む。使えるのは要介護度にかかわらず20万円までで、1割負担の場合、実際に支給される額は上限18万円。この枠は一度に使い切る必要はなく、分けて使える。

 引っ越したり、介護の必要度(〈1〉要支援1〈2〉要支援2または要介護1〈3〉要介護2〈4〉同3〈5〉同4〈6〉同5)が3段階以上上がったりした場合は、再度、20万円の枠を活用できる。実際にリフォームを行う場合は、ケアマネジャーなどとじっくり相談したい。

 東京海上日動ベターライフサービス(東京)の冨士川仁美・主任ケアマネジャーは「長期的な視点で必要ならリフォームを勧める。リハビリで回復が見込める場合は、福祉用具のレンタルで簡易的な手すりを付ける選択肢もある」と話す。

 リフォーム後に車いすを使うようになり、廊下に付けた手すりが邪魔になるなど、リフォームの内容やタイミングの決定には難しい面もある。冨士川さんは「訪問看護師や理学療法士など、本人の状態をよく知る専門職とも相談してほしい」と指摘する。

 手すりの設置なら数千円程度の自己負担が目安となるが、玄関周辺や風呂場の改修などは全体の費用が膨らみやすい。公益財団法人「住宅リフォーム・紛争処理支援センター」の渡辺靖司・住宅相談消費者支援本部次長は「業者に言われるままにならないためにも、改修の優先順位を事前に決めておくのが大切。自治体独自の補助金なども調べ、ゆとりのある資金計画を立てて」と助言する。

 細かな内容が書かれた見積書を求めるのがトラブル防止の基本で、複数の事業者で内容を比較したい。口約束ではなく、契約書を交わすのもポイントだ。

 事業者とのやりとりは、高齢者だけでは難しい場合もある。「可能なら、子どもや親戚に一緒に話を聞いてもらうのがよい」(渡辺さん)。同センターは、見積書の見方の助言やトラブル相談を「住まいるダイヤル」(0570・016・100)で受け付けている。

 (滝沢康弘)

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