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介護・シニア

介護報酬改定(下)特養、看取りの場に

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医師の協力を促す

介護報酬改定(下)特養、看取りの場に

 4月に行われる介護報酬と診療報酬の同時改定で、 看取みと りに対応できる特別養護老人ホームや、リハビリなどによる自立支援に積極的な介護施設が増えそうだ。施設はどう変わるのか、ポイントをまとめた。

 「マスさんに会わせてください」

 千葉県柏市の特別養護老人ホーム「ハートかしわ」。昨年秋、個室のベッドに横たわる恩田マスさん(当時99歳)のもとを職員や他の入居者が次々と訪れ、手を握っていった。亡くなる時期が近づいていた。

 ホームからの連絡を受け、非常勤の嘱託医を務める近くの開業医、古田達之さん(51)が駆けつけ、「ここで看取りますか」と家族に意思確認を行った。その約2時間後、次女の朋子さん(64)が「お母さん」と声を掛けると、マスさんは眠るように息をひきとった。

 古田さんは外来診療を中断し、再びホームに急行、死亡診断を行った。死後の身支度が終わると、大勢の職員が玄関に並び、マスさんを見送った。「病院で亡くなったら、こんな温かい感じにはならなかった」と朋子さんは感謝する。

 同ホームでは、マスさんのように多くの入居者を看取ってきた。職員は「古田先生は、24時間いつでも電話に出て、駆けつけてくれるので安心できる」と話す。

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 特養は「 つい のすみか」の役割を期待されているが、現状はこうした施設ばかりではない。多くの特養の嘱託医は週1~2日の非常勤。国の2016年度調査では、勤務日以外も嘱託医に対応してもらえる特養は、全体の半数に満たない。家族や本人の意向にかかわらず、最期が近づくと病院などに移す特養は16%に上った。

 嘱託医は、普段は他の医療機関で働いていて身動きが取りにくいうえ、「24時間対応に見合うような報酬ではない」との声も多い。都内の特養職員は、「異変があって嘱託医に電話しても、『救急車を呼んで』と言われる。熱意ある医師の協力がなければ、できることは限られる」と明かす。

 だが、高齢化の進展で、病院だけで高齢者の終末期に対応することには限界も見えている。このため、同時改定で特養の看取り機能を強化することになった。具体的には、複数の医師を配置するなどした特養で、嘱託医が早朝・夜間に緊急訪問した場合の介護報酬を1回6500円~1万3000円、上乗せする。実際に看取った場合の報酬も引き上げる。

 また、嘱託医が対応できない時に、代わりに訪問する医師がいない特養も少なくない。このため、嘱託医以外が看取りに対応した場合の診療報酬も高くする。

 介護報酬が上がる分、原則1割の自己負担分も値上がりする。ただ、住民税非課税世帯は、国が定めた月々の自己負担の上限額に達しているため、「実際に施設に支払う費用が変わらない人は多い」(厚生労働省)という。

 全国の特養が加盟する全国老人福祉施設協議会は「医師が夜間・早朝に対応できるかどうかが、特養での看取りに影響してきた。今回の改定は、医師の協力を得やすくする糸口になり、看取りの対応は一歩進むだろう」としている。

重度化防止を推進

 自立支援や重度化防止に積極的に取り組む介護施設も増えそうだ。

 特養や有料老人ホーム、認知症グループホームなどでは、理学療法士などの専門職らがリハビリ計画を立てた場合の介護報酬が月2000円、上乗せされる。

 特養や老人保健施設などでは、入所者がおむつを外せるようになるなど、排せつの自立度を高める取り組みをした場合の介護報酬が月1000円、上乗せされる。

 身体拘束は心身機能を低下させたり、認知症を進行させたりする恐れがあるため、ペナルティーが強化される。

 介護施設では、今でも緊急の場合などを除いて身体拘束が禁止されているが、「転倒や 徘徊はいかい を防ぐ」などとして、車いすに体をベルトで固定するなど、安易に身体拘束が行われていることもある。拘束した理由や日時などの記録、身体拘束に関する職員への研修などを怠った施設に対しては、報酬が大幅に減額されるようになる。厚労省は、「疑問を感じた時は、市区町村の高齢者虐待相談窓口などに相談してほしい」としている。

  <同時改定>  医療機関や薬局が受け取る診療報酬と介護事業者が受け取る介護報酬が同じ年に見直されること。診療報酬は2年に1度、介護報酬は3年に1度の改定のため、同時改定は6年に1度。国が進めたい医療、介護の取り組みの報酬を高く設定することで、政策を実現させる手段にもなっている。

 (田中ひろみ)

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