子どもの健康を考える「子なび」
医療・健康・介護のコラム
発達障害(18)本人の意志 任せ過ぎないで
発達障害では、精神科医で信州大付属病院子どものこころ診療部長の本田秀夫さんに聞きます。(聞き手・松本航介)
成長して二次障害が起きやすくなる育て方の最後に、本人の意志に任せ過ぎる育て方について説明しましょう。
よく、今の日本は学歴社会だと言われます。ところが、高学歴の人でも実際に社会人になってみると、「あの人は一流大学を出ているくせに仕事は全くできない」などと言われることもしばしばあります。
社会経験を積んだ人なら、学歴が必ずしも当てにならないと感じているのではないでしょうか。なのに、なぜか自分の子のことになると、「この子は少し変わっているけれど、勉強さえできれば、いい学校を卒業して、いい会社に就職できるのでは」と考えてしまいます。
実際、発達障害の子の中には成績がとてもいい子もいます。成績がいいと、親としてはもっと勉強させていい学校に行かせたい、と思うのが人情です。そこで、「勉強さえすれば他の苦手なことは何もしなくていいよ」と、本人の意志に任せ過ぎてしまうわけです。
得意な勉強以外、苦手なことはやらなくてもいいという環境で育つので、大人になっても、好きなこと以外はやらなくなってしまいます。何か仕事を頼まれても、「やってやる」という 傲慢 な態度になりがちです。そして、傲慢に振る舞う割には、実際にやってみるとそれほどうまくできない。
結局、「いい学校を出ている割には、仕事のできない人」という評価を受け、会社で行き詰まってしまうことがあるわけです。
これまでいくつかの育て方をお話ししました。発達障害の子どもの支援を考える上で、育て方はとても重要です。本人に対する教育が大切なだけでなく、適切な環境をつくっていくために、周りの人たちの理解も不可欠なのです。
【略歴】
本田秀夫(ほんだ・ひでお)
1964年、大阪府豊中市生まれ。精神科医。信州大医学部付属病院子どものこころ診療部部長・診療教授。日本自閉症協会理事。著書に「自閉症スペクトラム」など。
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テストの点数は何点ぐらいがいいのか? 大人になって、冷静に考えると、その空間における真ん中の少し上くらいが一番いいのかなと思います。 理由は簡単...
テストの点数は何点ぐらいがいいのか?
大人になって、冷静に考えると、その空間における真ん中の少し上くらいが一番いいのかなと思います。
理由は簡単で、評価する側の視線や社会的目線がそこにあるからです。
特に日本は受験などで競らされつつも尖がった能力で生きるのに向かない社会です。
そして、平均より少し上の持つ労働力としての流動性は流動性資産と同じで、兌換性が高いという強みがあります。
使い捨てにされるリスクもありますが、社会の中で労働力として扱われて書籍などと乖離した現場の経験値を積むには、自分の生き場所を考えるには一定期間の使われる時間が必要です。
弱点は相対的なもので無くすことはできませんし、そこを突かれることはよくあります。
また、テストや実務の「想定解答と違う別解」に関しては評価する側のメンツや利害も絡みます。
そういう理解も含めて、生きる力ではあります。
僕は大学院時代、トップから見た上司の立場を侵略しないように、わざとMRIの一部の業務を覚えませんでした。
弱みとは、相手を尊重するための方便でもあります。
こういう人間的な理解の共有は社会的な問題です。
苦手なことはしないなどのわがままを通すには苦手なことをする以上のエネルギーや才能と運が必要です。他の人が嫌がることやできないことをやって見せる必要があります。
日本の社会で大きな会社で出世をするのは諦めた方が良いでしょう。
しかし、出世を諦めれば、行動の自由度も上がりますから、マイナスばかりでもありません。
いずれにしても、発達障害の子供ばかりの課題でないと分かります。
特に今後は時代の転換期ですから、学歴や学習歴の意味も見せ方も変わります。
有名人や成功者のマネをさせたがる人もいますが、基本的にそれらの人は異常者ですから、キレイな部分を切り取って誤解するのは普通の人には向きません。
学歴神話と一緒です。
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