心療眼科医・若倉雅登のひとりごと
医療・健康・介護のコラム
【患者学(3)】医師並みの知識を持って一緒に治療方針を決める…「コンコーダンス」の理想
前回、「コンプライアンス」「アドヒアランス」という理想に、日本はまだまだ届いていないというお話をしました。
ところが、英国の医療では、アドヒアランスよりもさらに一歩前へ進んだ理想をすでに掲げているのです。「コンコーダンス」という考え方です。
考えや方針の調和、同意、一致へ…医師の知識・経験、患者の人生観
コンコーダンスは「調和や同意」という意味で、医師と患者の考えや方針が完全に一致していることを示します。
そのためには、患者は少なくとも、自分の病気や症状、治療法などについて、医師と同等の知識を持っていなければなりません。患者は医師任せにするのではなく、自分も十分な知識を持って、担当医師とともにどういう方針で病気を治療して行くのかを決定してゆく、と考えます。
医師は専門的知識と臨床経験から考えていきます。患者は、専門的知識の面で追いつくことはできても、経験はありません。しかし、治療方針の決定のために、医師とは異なる観点を持つことができます。自身の病気や人生をどう捉えているかだったり、家族や仕事など周囲の環境だったり、自分の経済的状況などです。医師と患者が、それぞれの考えを対等な立場で出し合いながら、詳細な方針を刻々と選択していくのです。
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