バイオリニスト 式町水晶さん
一病息災
[バイオリニスト 式町水晶さん]脳性まひ(4)人のためにコンサートを
中学生になると、ぜんそく、高血圧、胃腸炎で入退院を繰り返し、2年生で手足の障害も進んだ。
体調回復の転機は、3年生になる直前、2011年3月の東日本大震災だった。東京都内にいたが、東北の惨状に心が痛んだ。母の啓子さんとともに、6月に福島県二本松市、8月には岩手県陸前高田市を訪れ、演奏会を開いた。
被災地では、厳しい状況下でも、演奏を喜んでくれる笑顔があった。「人の役に立つコンサートをしたい」。使命感が強くなるにつれ、体調不良による 憂鬱 も少しずつ晴れていった。
高校生になると、車いすなしの学校生活を許された。「体を動かすのが大好きで、ようやく自由になれた気がした」。ジムに通って筋トレに励み、ジョギングも5キロ以上に伸ばした。「足や背中の筋肉が硬直するマヒはあるが、体を鍛えることで障害を補っている」
子どもにバイオリンを教える機会も増えた。演奏会の後、男の子から「みっくん(水晶さん)みたいなバイオリニストになりたい」という手紙を花束とともに渡された。純粋な言葉に、心のどこかで健常者に敵意を抱いていた自分を恥じた。
「障害者と健常者との間の見えない壁はなくならない。お互いの理解が深まるような音を奏でていきたい」。メジャーデビューアルバム「孤独の戦士」発売を記念し、4月14日に都内でコンサートを予定している。
(文・山田聡、写真・米田育広)
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バイオリニスト 式町水晶 さん(21)
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