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心房が不規則にふるえる「心房細動」…発症リスクを計算表で予測

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 仙台市で特定健診(メタボ健診)を受けた60歳代の男性は、主治医から結果の説明を受けた際、10年後に心房細動を発症する確率が20%と言われた。不整脈の一種で脳 梗塞こうそく などの原因になる病気だ。一瞬戸惑ったが、発症リスクの計算表を見せられ、減量などで4%まで下げられると分かり、生活習慣の改善に取り組んでいる。(赤津良太)

増える患者…脳梗塞や心不全、認知症の原因に

心房が不規則にふるえる「心房細動」…発症リスクを計算表で予測

 心房細動は、心房が不規則にぶるぶるふるえ、血液を全身に送るポンプ機能が低下する病気だ。流れがよどんで血栓(血の塊)ができやすくなり、これが脳の血管に詰まると脳梗塞を起こす。命は助かったとしても、片まひなどの重い後遺症に悩まされることがある。心不全や認知症の原因にもなる。

 患者は高齢者を中心に増え続けており、国内では2010年の約80万人から、30年には100万人を超えると予測される。早期に見つければ、薬で脳梗塞などの発症を予防することもできるが、 動悸どうき 、息切れ、胸の痛みなどの自覚症状が出ない人も多い。何がリスクになるのかを知り、より早い段階から予防に取り組むことが重要だ。

 ところが国内にはこれまで、年齢とともにこの病気の患者が増えるということ以外に、発症のリスクを調べた研究はほぼなかったという。

発症リスクを調べてみると…

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 そこで国立循環器病研究センター(大阪府吹田市)予防健診部の小久保喜弘さんらは、地元住民の生活習慣や病気の記録などを30年近く蓄積したデータベースを活用。心房細動のリスクとなる原因を探り、発症確率を予測する国内で初めての大規模研究を行った。

 無作為に選んだ6898人を1989年から約13年間追跡したところ、311人が心房細動を発症。健診データや生活習慣などとの関連を詳しく調べた結果、血圧やBMI(体格指数)、飲酒量、喫煙などが発症のリスクであることが明らかになった。

 男女で大きな差が出たのは年齢だ。男性が50歳以降、徐々にリスクが高まるのに対して、女性は60歳を過ぎて急上昇し、70歳代でリスクが男性と同等になった。また心臓の雑音(心雑音)などがある場合、30歳代など若い世代ほど発症リスクが高いことも分かった。

健診データがあれば、10年後の発症確率を簡単に計算

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 これらの項目をリスクの大きさに応じて点数化し、10年後の発症確率を予測できるようにしたのが計算表だ。小久保さんは「健診データがあればだれでも簡単に計算できる。気になる数値が出たら、循環器病の専門医に相談してほしい」と話す。

 不整脈の治療に詳しい土橋内科医院(仙台市)院長の小田倉弘典さんは、昨年6月に計算表が発表されると、すぐに患者の指導に取り入れた。「高血圧や肥満、酒量などを改善すると、発症確率が何%に下がるのかが分かるので、特に高リスクの人では、予防への意欲を高めることも期待できる」と評価する。

 心房細動の早期発見に役立つのは心電図検査だが、08年にメタボ健診の必須項目から外れた。小久保さんは「例えば、発症確率が10%以上の人には心電図検査を追加して行うなど、計算表を活用した仕組みを考えてもいいのではないか」と話している。

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