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上手に生き、やる気を高めるには? コンディショニング研究会 堀江重郎・順天堂大教授コラム(上)

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 コンディションを整えることは、スポーツだけでなく、日々の仕事や社会生活を円滑に進めるためにも重要です。有識者でつくる「コンディショニング研究会」(読売新聞社など協賛)の堀江重郎・順天堂大学教授は、男性ホルモン「テストステロン」に着目しています。

プロの仕事とは

 コンディショニングは、プロフェッショナルな仕事の遂行には欠かせません。プロフェッショナルな仕事には2通りあると考えられます。一つは、たとえば今日は国内出張、明日は海外のクライアントとのテレビ会議……というような日々異なる複雑なタスク、もう一つは陶芸家の仕事のような、一日中ろくろを回すという同じ動作の繰り返しの中でさまざまなイメージを形にしていくような仕事。前者は多様なタスクに対応するために、後者はずっと同じリズムで仕事を続けるためのコンディショニングが必要です。

75%のコンディションでもパフォーマンスを出す

 プロフェッショナルな仕事ができている人は、コンディションが整っているという言い方もできるでしょう。大仕事が終わったらバッタリと倒れる、大作が完成して燃えきる、というふうにならないよう、常に仕事の疲れを最小限に抑えるための、疲労を残さないコンディショニングによって、毎日同じ調子でいられるように整えているのです。もっとも、毎日ずっと100%のコンディションを維持するというのは難しく、波があるものですが、75%のコンディションでも一貫したモチベーションを保ち続ける、パフォーマンスを発揮できるようにしたいものです。

 そのためには、自分をとりまく社会環境との関わりが重要になってきます。何をするにも、まったく1人で動くということは少なく、何らかのチームで行うことが多いですよね。その際、「自分が認められている」「社会環境にサポートされている」と感じられる心地よい居場所が必要です。

「テストステロンが低くてコンディションがいい」はあり得ない

 社会環境の中でうまく立ち回る、モチベーションを高める。この二つと関連が深いホルモンがあります。それは男性ホルモンの「テストステロン」です。テストステロンは、男性の性機能の維持や男らしい心身の形成に必要なホルモンであるばかりではなく、社会への働きかけ、挑戦、決断、主張といった、社会性を左右するホルモンでもあります。テストステロンなくしては、社会参画がうまくいかなくなってしまうと言えます。

 次に、モチベーションとの関わりについてですが、何かを達成した快感や喜びが得られたとき、脳の報酬系という神経回路から “やる気”ホルモンのドーパミンが出てきます。それに伴い、テストステロンも出てきます。「何かをなし得た→快感だ→次のアクションを起こそう」という流れで、テストステロンがブーストされるのです。逆に言えば、テストステロンの分泌量(テストステロン値)が低いというのは、意欲=やる気がわいてこない状態にあるという指標でもあります。テストステロン値が低くてコンディションがいいという状態は考えにくいですね。

 テストステロンの重要性は、女性でも同じ。女性の体内には、女性ホルモンの3~10倍ものテストステロンが存在します。女性のコンディショニングにも、とても重要なホルモンなんですよ。次回(3/26掲載予定)は、テストステロン値を高く保つための生活習慣について、紹介します。

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堀江 重郎(ほりえ・しげお)
コンディショニング研究会アンバサダー、順天堂大学医学部教授、医学博士。
東京大学医学部卒業。日米で医師免許を取得し、帝京大学医学部主任教授などを経て、2012年から現職。日本初の男性外来であるメンズヘルス外来を開設。アンチエイジングと男性医学、腎臓学の研究に力を入れる。日本メンズヘルス医学会理事長、日本抗加齢医学会理事長。著書に『ヤル気が出る!最強の男性医療』(文春新書)など。

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