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心療眼科医・若倉雅登のひとりごと

医療・健康・介護のコラム

【患者学(1)】検査も薬も全て自分で決めるなら診療時間は10倍?…「インフォームド・コンセント」の現実

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【患者学(1)】検査も薬も全て自分で決めるなら診療時間は10倍?…「インフォームド・コンセント」の現実

 自分が病気になって患者として治療を受ける時、医師とどう向き合えばいいのでしょうか。私は著書「絶望からはじまる患者力」「医者で苦労する人、しない人 心療眼科医が本音で伝える患者学」(いずれも春秋社)などで、患者が取るべき姿勢についての考えを述べてきました。

 私が治療現場に40年携わった経験のほか、自らが患者として手術や治療を受けた体験が基になっています。

 「患者学」「患者力」という言葉に定義があるわけではなく、一つの診療科や一つの病気だけに関わる話でもありません。しかし、患者と医師のあるべき関係を考えるきっかけとなる、格好のキーワードだと思います。

 私の前任地である北里大学病院(神奈川県)は、昭和46年の開設当初から「患者中心の医療」をスローガンとして掲げてきました。現在の勤務先の井上眼科病院(東京都)でも「患者さま第一主義」を打ち出しています。

 病院ですから患者のためにあるのは当然なのに、実際は掛け声として掲げなければならないほどの難題でもあると言えるでしょう。

「説明と同意」…患者の「自己決定権」が一番大切

 さて、患者と医師をつなぐ言葉として、「インフォームド・コンセント」という言葉を知っている人は多いと思います。第2次世界大戦中、同意なく人体実験が行われた歴史への反省などから、ヨーロッパを中心に患者の権利が叫ばれるようになり、1964年のヘルシンキ宣言で「患者の人権を守ること」が明文化されたことから始まりました。

 日本では、日本医師会が「インフォームド・コンセント」を「説明と同意」と訳して、1997年改正の医療法に初めて記されました。欧米の取り組みから約30年遅れたことになります。

 「インフォームド・コンセント」は、日本では一般的に「患者が医師の言うことを納得した上で受け入れること」であると思われています。

 しかし、「インフォームド・コンセント」の最も重要な部分は「自己決定権」です。最近では、この自己決定権を強調した「インフォームド・チョイス」という用語も用いられるようになっています。

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201505_第4回「読売医療サロン」_若倉

若倉雅登(わかくら まさと)

井上眼科病院(東京・御茶ノ水)名誉院長
1949年東京生まれ。北里大学医学研究科博士課程修了。グラスゴー大学シニア研究員、北里大学助教授、井上眼科病院副院長を経て、2002年から同病院院長。12年4月から現職。日本神経眼科学会理事長、東京大学医学部非常勤講師、北里大学医学部客員教授などを歴任。15年4月にNPO法人「目と心の健康相談室」を立ち上げ副理事長に就任。「医者で苦労する人、しない人 心療眼科医が本音で伝える患者学」、「絶望からはじまる患者力」(以上春秋社)、「心療眼科医が教える その目の不調は脳が原因」(集英社)、医療小説「茅花流しの診療所」、「蓮花谷話譚」(以上青志社)など著書多数。専門は、神経眼科、心療眼科。予約数を制限して1人あたりの診療時間を確保する特別外来を週前半に担当し、週後半は講演・著作活動のほか、NPO法人、患者会などでのボランティア活動に取り組む。

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