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認知症患者、再入院リスクが1.5倍…機能低下・服薬困難で

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認知症患者、再入院リスクが1.5倍…機能低下・服薬困難で

 高齢で認知症を患っていると、退院して間もなく同じ病気やけがで再入院するリスクが約1・5倍に高まるとする調査結果を、医療経済研究機構や国立がん研究センターなどのチームが発表した。約180万人のデータを分析した国内初の研究。股関節の骨折や脳 梗塞こうそく 、肺炎などでの再入院が目立ち、入院による身体機能の低下や退院後の服薬の難しさが原因とみられる。米国老年医学会雑誌電子版に20日、論文が掲載された。

65歳以上183万人のデータ活用

 佐方信夫・同機構主任研究員らは、2014年4月~15年9月、全国987病院に入院した65歳以上の患者183万人のデータを活用。日常生活の自立度や薬剤の種類から認知症の有無を推定、認知症を患う27万人と認知症ではない156万人で、退院後30日以内に再入院した割合を比べた。

 再入院した人は計8万6000人。認知症の人が自宅や介護施設に戻ってから再入院するリスクは、年齢による偏りを調整し比べたところ、全体で1・46倍だった。

 病気やけが別では、転倒で足の付け根を折る 大腿だいたい頸部けいぶ 骨折が1・46倍、脳梗塞が1・3倍、食べ物や唾液が気道に入って起こる 誤嚥ごえん 性肺炎が1・23倍と高かった。認知症の重さが違っても傾向は変わらなかった。

 研究チームによると、認知症の人は一般に、入院後、環境の変化や投薬で意識障害や興奮が起きやすくなる。安全のために身体拘束を受けたり、ベッドに寝かせきりにされたりして活動量が減り、身体機能も認知機能も落ちやすい。認知症をふまえたバランスの良い治療を受けずに退院するため、病気やけがが再発しやすいという。

 入院中に身体機能を落とさないためには、痛みの緩和や栄養管理が重要と、研究チームは指摘。退院後は、適切な服薬や飲食の方法について、病院が家族や介護職らへ助言をしたり、電話でフォローしたりすることが必要としている。

 小川朝生・同センター東病院精神腫瘍科長は「高齢に認知症が加わった人は極めて 脆弱ぜいじゃく になるという認識が、医療や介護の現場や家族の間で共有されていない。生活重視の支援体制づくりが急務」と話している。

【解説】退院後のケア、連携体制が急務

 認知症を抱えた高齢者に関する調査結果の背景には、複合的な課題がある。

 一般病院では、認知症を意識した診療体制が構築されていない。日本老年医学会が薬の使い方について示した指針も、現場では十分に生かされていない。

 連携にも問題がある。病院が日中は一人きりなどの生活実態を踏まえず、退院後のケアをする介護職らに「薬は飲める」と引き継ぐため、自宅や施設で本人が薬を飲み忘れたり量を間違えたりすることが少なくない。

 家族は、病院に入れば元気になると思いがちだ。入院自体がリスクになることに気づいていない。

 認知症の高齢者は2012年の約460万人から、25年に約700万人に増えると予測される。再入院を少なくできれば、医療現場の業務を減らし、医療費を抑えることも可能だ。社会全体で意識を変えることが求められている。(医療部 米山粛彦)

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