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高齢者や障害者、自宅でカット…訪問美容で心も潤う

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 病気や障害で外出が難しい高齢者らの家に美容師や理容師が訪れ、カットなどを行う「訪問美容(理容)」が増えている。業界団体の調査では、東京都内だけでここ5年間で約4000件増加。国も規制を緩和し、育児・介護中の人への訪問も解禁した。美容師らの訪問を通じて、高齢者の生活状況の把握に役立てようとする自治体も出てきた。

車いすのまま

 東京都文京区の一軒家の洗面所。2月13日、加藤順子さん(70)は、車いすに座ったまま、カットや白髪染めをしてもらった。

 ハサミを握ったのは、訪問美容会社「un.(アン)」(東京都港区)の社長で、美容師の湯浅一也さん(31)。同社は2012年、東京・原宿の美容室に勤めていた湯浅さんが設立した。

 遠方は高速料金が必要だが、通常は、カット・シャンプーを8000円(税抜き)で行っている。1都3県に約130人の顧客がおり、湯浅さんを含め12人の美容師が各地に足を運ぶ。

 16年7月に脳 梗塞こうそく で倒れ、左半身にまひが残る加藤さんは「車いすに乗った姿を近所の人に見られるのが嫌で、外出を控えている。美容師さんとの会話は楽しい」と笑顔で話した。

育児・介護でも

 衛生環境を確保するため、美容師法・理容師法では、美容室や理容室での施術を原則としている。訪問サービスは、「疾病その他の理由」がある場合に限り、例外として認めてきた。

 一方で、厚生労働省によると、65歳以上の要介護・要支援者は、16年3月末現在で前年同期比15万人増の620万人に。厚労省は16年3月、疾病のほか、障害などで要介護状態にある人に加え、育児や介護で自宅を離れられない人たちも訪問美容(理容)を受けられるとする通知を出した。

 加藤さん宅でも、順子さんを介護しながら育児もしている次女の橋本喜子さん(33)が、カットとカラーリングをしてもらった。

 東京都美容生活衛生同業組合によると、個人宅への訪問は11年度は1万3194件だったが、16年度は1万7260件に増えた。

見守りで連携

 静岡県小山町は16年度から、町社会福祉協議会と連携し、町内の美容師らでつくる「町福祉理美容協会」に依頼して訪問美容(理容)事業を始めた。

 同協会には、寝たきりの人の体の位置を無理なく変えながらカットするなど、必要な技術の講習を受けた美容師ら15人が登録。美容師からの報告を通じ、行政側が高齢者の生活状況を把握できる仕組みだ。

 16年度(16年9月~17年3月)は6件だったが、17年度は現在までに31件の利用があった。同町の担当者は「家に引きこもりがちな高齢者が社会と関わりを持つきっかけにもなっている」と話している。

施術時の事故防止…業界団体が講習

 リクルートライフスタイルが2017年3月に全国の美容室を対象に実施したインターネット調査では、回答した2548か所のうち12・6%にあたる321か所が、「訪問美容に取り組んでいる」と答えた。

 一方、個人宅での施術では、利用者の体を無理に動かして骨折させるなどの事故が起きないよう、注意が必要だ。都内の美容師団体では、講習会などを通じて事故防止対策を進めている。

 山野美容専門学校(東京)では、掃除機で髪の毛を吸い込みながらカットするなど訪問美容用の技術を身につける授業を設けている。

 全日本美容業生活衛生同業組合連合会の細井重憲事務局長は「高齢化が進み、美容師の過当競争も進む中で、今後も訪問美容は増えるだろう。訪問先でのサービスの充実と技術力の向上を業界全体で進める必要がある」と話している。

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