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いちばん未来のシニアのきもち

コラム

世代間交流はむずかしい?

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 こんにちは、慶成会老年学研究所の宮本典子です。

 高齢者は、超高齢社会のいちばん先をいく人たちです。共に生きやすい社会をつくることは、次の世代の未来をつくることになると思いませんか?

 先日、高齢者施設で働くスタッフが、「施設で働くまで家族以外の高齢者と話したことがなかったし、今でも入居者以外の高齢者と接触することはほとんどありません」と言っているのを聞きました。

 今は、高齢者と若者が自然に交流し、話をする機会はなかなかないのでしょうか。都会であれば、なおさら顕著かもしれません。平成29年度版高齢者白書によると、高齢者たちの約6割が、若い世代との交流に参加したいと考えていたといいます。

 もったいない。きっと、お互いに得られるものがあるはずなのに……。

苦労していた時期に戻りたい?

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 私たちの研究所では、高齢者と若い世代が水平の関係で、テーマに即して互いに経験や思いを語り合うワークショップを、2004年から開いています。

 あるとき、10代から90代までの老若男女の12人が、「いくつにでもなれるとしたら、いくつになりたい?」と聞かれました。

 「30歳くらいかしら」

 「18歳がいい」

 「お母さんのおなかの中に戻りたい」

 皆の答えは様々で、「今よりもっと先の70歳になってみたい」という若者もいました。

 「なぜ、その年になりたいのですか?」というのが、次の問いでした。

 「この年の時が終戦で、一番苦労したんだ」

 「お金がなくて苦学生だった。勉強したくて、必死にがんばった時期です」

 「食料がなく、子供たちに食べさせることで、いっぱいいっぱいの生活でした」

 なぜか、高齢の参加者は、皆同じように、最も苦労したり、大変だったりした時代だったと語りました。

 「なりたい年齢を聞いたのに、みなさんは苦労した時代、大変だった時代に戻りたいのですね……」と、司会役が尋ねると、「そういえばそうですね」と、ある高齢者が答えました。「その時は大変で苦労していても、もしかしたらその時が一番輝いていて、一番生き生きしていたのかもしれません」

 これを聞いたある若者が、「これから先の人生で困難に直面した時、今日のこの言葉を思い出します。今苦しくても、後で振り返れば、一番よい時代と思えるかもしれない。そう思えばがんばれる」と感想を述べました。

 高齢者からは、「最近のテレビに映し出される若者を見て、日本の将来を憂えていたけれど、実際に会って話すとみんな頼もしい。うれしい気持ちになって、元気になります」との声が上がりました。

交流は楽しいチャレンジ

 高齢者の語りの中には、人が生きていく上で大切な知恵や経験がたくさんあります。若い世代がそれを聞いて、「今」と「未来」を生きる力にできればよいのに、と思います。

 それが実現するには、世代間でよいコミュニケーションができないと始まりません。それは、ますます超高齢化する社会に突入していく、日本にとって大きな課題です。

 いえ、課題ではなく、楽しいチャレンジですね。

 「高齢者と話をする際の留意点」を学びたい、という研修依頼はよく受けます。でも、よく考えれば一方的な視点ですね。高齢者だって、自分たちより若い世代とどう話せばよいかを知りたいはずです。

 そんな高齢者のために、「若者と話す際の留意点」の研修があったら、役に立つのではないかと思うようになっています。(宮本典子 臨床心理士)

(イラスト:西島秀慎)

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宮本典子(みやもと のりこ)

 慶成会老年学研究所主任研究員。 臨床心理士。

 聖心女子大学文学部歴史社会学科人間関係(現人間関係学科)卒業。

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 主に認知症高齢者、高齢期のうつ病の心理療法及び介護家族の心のケアにかかわる。自宅で暮らす高齢者や認知症の人を対象に、情緒の安定や認知機能の低下予防をめざす心理療法プログラム「ユリの木会」を運営している。共著に「認知症と診断されたあなたへ」(医学書院)、編著に「いちばん未来のアイデアブック」(木楽舎)がある。

慶成会老年学研究所

 高齢社会に関する心理学的、医学的臨床、研究、及び教育・研修を行う研究所として、1988年に設立。現在、心理学の専門家によって、高齢者と家族を対象にしたカウンセリング、専門職や一般企業への教育・研修と、高齢者と高齢社会に関する学際的な研究を行っている。

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