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医療・健康・介護のコラム

第1部[家事分担](下)作業「見える化」で誘導

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「丁寧」脱却 サービス利用も

第1部[家事分担](下)作業「見える化」で誘導

うださんのコミックエッセー「家事も、育児も、お金も、紙に書くだけでお悩みスッキリ! とにかく書き出し解決術!」の一場面。“家事の見える化”の過程がユーモラスに描かれている

 重くなりがちな女性の家事負担をどう軽減するかが、共働きを無理なく続けるための鍵となる。

 6歳の息子と4歳の娘を育てる愛知県在住のイラストレーターうだひろえさん(41)の自宅には、黄緑色のマグネットボードがある。うださんと夫の 周之のりゆき さん(43)の似顔絵が上部の両端にあり、中央に線が引かれている。時間の流れに沿い、上から下に向けて「朝食作り」「洗たくもの取込」など家事の項目を書いたマグネットを担当する側のボードに貼る。

 以前は、家事に疲れ切り、非協力的に見えた周之さんに対し怒りを爆発させることも多かった。「冷静になろう」と毎日の家事をリストアップし、時系列に並べて周之さんに見せたのが2015年夏。「仕事にあてる時間も確保したいので、今よりも家事を担ってほしい」と訴えると、周之さんはすんなりと朝食作りやごみ出しなどを引き受けてくれた。

 「夫は家事をしたくないのではなく、何をやっていいのかわからなかったんだと思う。情報を視覚的に伝えるだけでこんなに効果があるとは驚きだった」とうださんは振り返る。

現在のボードは2代目。「取り組んだ家事の数が見えやすく、夫にも好評です」と、うださん(左)と長女(愛知県内で)

現在のボードは2代目。「取り組んだ家事の数が見えやすく、夫にも好評です」と、うださん

 マグネットボードはそれから半年後に導入。「相手が担当する家事を自分でやってマグネットを移動させる時は、ゲームのアイテムを一つ奪い取るかのような感覚になるのも、うまくいった 秘訣ひけつ かも」。周之さんは「朝食を作るために早く起きるのにも慣れた。子どもたちも楽しみにしてくれているし」とほほ笑む。

■食材は宅配

 家事支援サービスを活用するという選択も、負担軽減の一つの手段だ。

 8歳と4歳の娘を育てる兵庫県の公務員女性(42)は、主菜と副菜の献立が組まれた食材の宅配サービスを利用する。

 長女の小学校入学を機に、保育園だけでなく学校関係の雑事も加わり、仕事と家事・育児の両立に負担を感じるようになった。その一方で、出来合いのものではなく、手をかけたものを食べさせたい理想があり、ギャップで悩んでいた時にサービスの存在を知った。「献立を考え、買い物をする手間がなくなり、驚くほど楽になった」と笑顔を見せる。

 国は、14年に閣議決定した「日本再興戦略」で、女性の活躍を推進するため、家事支援サービスの充実を挙げた。これを受け、家事代行の業界団体などが、他人が家に入る抵抗感やサービスの質への不安を解消しようと、事業者の認証を昨年始めるなど、利用しやすい環境作りを図る。

 企業が従業員の利用を支援する動きもある。利用者が一定の割引を受けられる家事代行大手「ベアーズ」の法人会員は現在、約480社。年々増加しており、同社副社長の高橋ゆきさんは「仕事で力を発揮してもらうための新しい福利厚生の象徴として注目を集めている」とみる。

■理想が圧力に

 最近、家事の総量を減らすことをテーマにした本の出版も相次ぐ。昨年11月に出版された家事研究家 佐光さこう 紀子さんの「『家事のしすぎ』が日本を滅ぼす」(光文社新書)では、「丁寧な暮らし」といった日本人の家事に求める高い理想が女性に見えない圧力を与えていると指摘。「朝ごはんは温かくなければ」「年末には大掃除が欠かせない」といった“常識”に疑問を呈する。編集担当者は「読者層の中心は30~40歳代の女性。自分自身の問題として受け止められているようだ」という。

 野村総合研究所(東京)の上級コンサルタント、武田佳奈さんは「こういう風に家事や子育てをしたいという思いが、家事を手放しにくくしているのではないか。しかし、特に共働きの家庭では家事に割ける時間は限られる。自分以外でも済ませることができる家事について、ある時は他者の力を借りるといった柔軟な発想が必要」と話している。

(久場俊子、二谷小百合、家城健太が担当しました)

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結婚、出産後も働き続ける女性が増える一方、育児との両立の難しさやキャリアアップを描きにくい現状はあまり変わりません。女性が真に活躍するために何が求められているのか。現代の「共働き事情」を描きます。

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