認知症介護あるある~岡崎家の場合~
医療・健康・介護のコラム
「おかず、少ないねー」義母の手料理に息子が衝撃の一言

漫画・日野あかね
4歳児の自由な発言…豪華な食卓なのになぜ?
それまで当たり前だったことが、認知症の父さんを介護するようになってから、そうでなくなることが少なくありません。だけどそれが20年以上も続くと、どちらが当たり前か分からなくなる今日この頃……。
お正月に夫のヒロさんの実家に行き、みんなで食卓を囲む機会がありました。そのとき、4歳の息子たー君がとんでもないことを言ったのです。
「おかず、少ないねー」
テーブルの上には料理上手なお義母さんが作ったお料理が、大皿に盛られていくつも並んでいます。我が家のいつもの食卓よりも絶対におかずの数は多いし、とても豪華! 「息子よ、なんでそんなこと言うのぉ~!!!」と心の中で叫びつつ、「そんなことないよ~」と取り繕う私。「え~、少ないよー」と、4歳児はどこまでも自由です。
幸いにもヒロさんの家族は心が広く、「そうか、そうか」と、みんなが笑って許してくれました。が、息子が突然なぜそんなことを言ったのか、不思議でなりませんでした。
おかずは控えめでも、皿数はたくさんの岡崎家
それから数日して、今度は私の実家、岡崎家で食卓を囲む機会がありました。お義母さんとは打って変わって、料理が苦手な母さんの作ったおかずは主菜と副菜の二つだけ。それでもテーブルの上を見て、「おかず、いっぱいだね~」と自由な4歳児が発言します。「え~、なんで~?!」、実家ということもあり、今度は声に出して叫んでしまいました。
そして、岡崎家の食卓を見て、すぐその理由が分かりました。おかずは少ないのに、テーブルの上にはところ狭しとお皿が並んでいます。そう、これが我が家の「認知症介護あるある」なのです。
認知症の父が料理を独り占め…大皿は絶対NG
大皿で取り分ける食事スタイルは、認知症の父さんには絶対NG。というのは、特に食へのこだわりの強い父さんは、みんなで取り分けて食べる大皿に盛ったおかずをすべて一人で食べてしまうのです。
認知症の人は、あれこれおかずをつまんでいくのではなく、目の前にあるものや、自分の好きな料理をひたすら食べ続ける傾向があると聞いたことがあります。それは父さんにも当てはまりました。
できた順に料理を大皿に盛り、すべて出し終えて席に着くと、最初に運んだ料理が父さんによって食べつくされている、なんてこともしばしば。その対策として、岡崎家ではいつからか“お膳スタイル”のように、すべての料理を一人分ずつ小皿に分けてテーブルに出すようになりました(ちなみに父さんが先に食べ始めないように、箸を一番最後に出します)。
雰囲気だけは“おかずがいっぱい”
なので、主菜、副菜、ご飯、みそ汁のそれぞれの食器×人数分。さらに付け合わせの漬物なども各々の小皿に分けられてテーブルに並びます。どんなに質素(!)な食卓でも、お皿の数だけはたくさん。雰囲気だけはおかずがいっぱいです。このスタイルになってから、母さんは毎度「おかずは少ないけど、食卓はにぎやかだ~」と、ガハガハ笑いながら支度をしています。これが岡崎家にとっては“当たり前”なのです。そして、大皿料理の廃止(?)に伴い、食器棚から大皿は消え、小皿が大量に増えました。
とりあえず息子には「おかずがいっぱい≠お皿の数がいっぱい」ということを早急に教えないといけません。……って、子育てにそんな独特な項目があるのも「認知症介護あるある」なのでしょうか?(岡崎杏里 ライター)
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