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僕、認知症です~丹野智文43歳のノート

コラム

認知症でも働ける…2冊を使いこなす丹野式ノート術

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職場で信頼してもらうには…

 私が勤める「ネッツトヨタ仙台」は、アルバイトを含め500人余りが働く自動車販売会社です。5年前の春に若年性アルツハイマーと診断された時、社長から「会社に戻ってきなさい」と言われて、総務・人事グループで働くようになったことは、前にこのコラムでも述べました。

 入社から17年、営業一筋だった私が、本社の事務職になったのです。会社としても、認知症の社員を受け入れるのは初めてのことですから、私に何ができるのか、どんな仕事をやらせればいいのか、最初は全く分からなかったのではないかと思います。

 私の方は、認知機能に障害があっても、ちゃんと働けることを証明しなくては、という一心でした。一緒に働く仲間として、周りから信頼してもらうにはどうしたらいいのかと考えました。

「手順ノート」と「予定・行動記録ノート」

 覚えられないなら、書いておくしかありません。仕事に必要なことは、すべて紙に記録して、いつでも見られるようにしておくことにしました。

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仕事の手順を書いたノート

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毎月行う仕事の表。終わったら○を書き込みます

 まず、同じフロアの社員一人ひとりの名前が書かれた座席表を自分の机に貼りました。毎日顔を合わせている人でも、急に誰だか分からなくなることがあるためです。

 仕事に必要なことを書き留めておくのには、娘たちがプレゼントしてくれた2冊のノートを活用しています。

 1冊には、仕事の手順を細かく記しています。前の日にやったことをすっかり忘れてしまうので、このノートを見ながら一つひとつ手順を踏んで作業を進めます。毎日、新しい仕事に取り組んでいるような感覚です。

 教えてもらったことは、逐一ノートに書き付けていきました。自分では、必要なことを全て押さえたつもりでいるのですが、後でノートを見ながら一人でやろうとすると、必ず分からないところが出てきます。その度に少しずつ加筆していって、今では、その仕事を初めてやる人でも、このノートさえあれば最後までできるくらいになりました。

 もう1冊のノートには、「やる予定のこと」と「実際にやったこと」を記録しています。毎月、やらねばならないことを表にして貼っておき、やり終えた仕事に印をつけています。

書かれた手順を一つずつ実行

 送られてきた年金の書類を基に、伝票とリストを作る作業を例として、具体的な流れを説明してみます。

 まずノートを見て、書類が何日に発送されるのかを確認します。書類が届いたら、分類してファイルにとじます。ノートには、どう分類するかはもちろん、ファイルがどの棚の何段目にあるかまで書いてあります。

 次に、パソコンに入っている伝票とリストを開きます。パソコンの中は、たくさんのフォルダーとファイルがありますが、ノートに書かれた通りに順番にクリックしていけば、目指すファイルにたどり着けるようになっています。

 伝票とリストを作成した後は、「○○のプリンターで、B5で印刷」とノートに書かれているので、その通りにします。

 完成したら、手順の通りにできているか、ノートを見ながら確認します。日付や数字などもチェックして、間違いがなければ、上司に提出します。1か月の予定を書いた表に、やり終えた印として「○」をつけて、やっとその仕事が完了するのです。

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丹野智文(たんの・ともふみ)

 おれんじドア実行委員会代表

 1974年、宮城県生まれ。東北学院大学(仙台市)を卒業後、県内のトヨタ系列の自動車販売会社に就職。トップセールスマンとして活躍していた2013年、39歳で若年性アルツハイマー型認知症と診断を受ける。同年、「認知症の人と家族の会宮城県支部」の「若年認知症のつどい『翼』」に参加。14年には、全国の認知症の仲間とともに、国内初の当事者団体「日本認知症ワーキンググループ」を設立した。15年から、認知症の人が、不安を持つ当事者の相談を受ける「おれんじドア」を仙台市内で毎月、開いている。著書に、「丹野智文 笑顔で生きる -認知症とともに-」(文芸春秋)。

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