大人の健康を考える「大人び」
医療・健康・介護のコラム
薄毛・脱毛(3) 保険適用外の薬 月1万円
薄毛脱毛シリーズでは、毛髪再生医学が専門で大阪大寄付講座教授の板見智さんに聞きます。(聞き手・安田幸一)
男性型脱毛症を治療する薬は、既にいくつか開発されています。
日本で初めて承認されたのは2005年。「フィナステリド」という飲み薬です。男性型脱毛症の原因となるジヒドロテストステロンという物質を作れないように作用して、発毛を促します。15年には「デュタステリド」という飲み薬が認められました。フィナステリドとは少し違う仕組みで毛を増やします。
フィナステリドを3年以上飲んだ人の約80%に発毛がみられています。うぶ毛のような毛が生えたり、頭皮が隠れるほど発毛したり、効き目は人によって様々。デュタステリドもほぼ同じ効果が認められています。
いずれもすぐに毛は生えません。飲み始めてから半年はかかります。フサフサになることはなかなか期待できませんが、多くの人が満足感を得ています。
ただ1年を過ぎれば毛髪数は頭打ちになり、飲まないと元に戻るのが悩みどころ。その悩みを生涯抱えなくて済むのは、毛がはえている部分の毛包を髪の毛が抜けた部分に移植する「植毛」です。植えるのは1万本が限界です。
どれも病気の治療ではないので、医療保険がきかず全額自費になります。飲み薬の治療には1か月約1万円、年間で12万円ほどかかります。植毛手術は100万~150万円。薬をずっと飲み続けるならば、それほど高くないかもしれません。
【略歴】
板見 智(いたみ・さとし)
1952年生まれ。大阪大学医学部卒。マイアミ大学研究員、大分医科大学助教授、大阪大学助教授などを歴任し、2006年から現職。著書に「専門医が語る毛髪科学最前線」(集英社新書)がある。
【関連記事】