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コラム

第1部[家事分担](上)企業、行政、男性変わる必要

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 夫婦の共働き化が進む一方で、家事や育児が女性側に重くのしかかる状況はあまり変わらない。店の従業員がすべての業務を1人でこなす実態になぞらえた「ワンオペ育児」という言葉も昨年広がった。連載の第1部では、共働き夫婦の家事分担について考えてみたい。

常に時間と闘い妻は切迫感

 

 小学生の子ども2人を育てる近畿地方の会社員の女性(43)は毎日、帰りの電車に揺られながら、晩ご飯を作る手順を頭でなぞる。「少しの時間も無駄にはできない」と思うからだ。

 労務部門で働く女性は短時間勤務制度を利用して、午後4時に退社する。帰宅後は食事の準備、習い事の送迎、洗い物……。あっという間に1日が過ぎる。いつも時間に追われ、「仕事も家事も中途半端」と感じるのがつらい。

 1人目を産んで職場に復帰した際、夫に1日の用事を伝え、「何ができるかを言ってほしい」と交渉。夫は朝、洗濯物を干し、食器の後片づけをして家を出る。だが、管理職で帰宅は午後11時頃。一番忙しい夜は頼れない。「妻6、夫4」の家事分担の理想は遠い。

 以前は「早く帰って来て」とメールをしたが、「これから打ち合わせ」「部下がミスして帰れない」――。「遅くなるのは俺のせいじゃない」という返事を何度も聞くうち、あきらめてしまった。「帰る電車が1本遅れたら、後のスケジュールが崩れる。そんな切迫感を持つ自分とは働き方が違い過ぎる」と痛感する。

 短時間勤務だから給料は25%カット。夫が定時に終業できるなら、フルタイムで仕事をし、もっと社会に評価されたい、と思う。

 国は成長戦略の柱に女性活躍を掲げ、就労を推進する。でも、と女性は言う。「共働きを進めるなら、まず夫婦が共に家事をし、子育てできる社会にしてほしい」

■「無償労働」

 働いて賃金を得る「有償労働」に対し、家事や育児は報酬のない「無償労働」と呼ばれる。内閣府の推計(2011年)では、この無償労働を金額に換算すると、働く夫の年49万円に対し、働く妻は223万円に上った。2016年放送の人気ドラマ 「逃げるは恥だが役に立つ」 は家事の経済的価値をわかりやすく描き、幅広い層の女性の共感を得た。

 和光大教授(労働社会学)の竹信三恵子さんは、人間の営みに欠かせない家事や育児が正当に評価されない現状を「家事労働ハラスメント」と名づけ、変革を訴える。

 「日本の正社員の働き方には家事をする時間が組み込まれていない。結果、女性は非正規などの低賃金労働、家計を担う男性は長時間労働に追いやられている」と分析。共働き社会には「労働時間の短縮」「保育所など公的サービスの整備」「男女の公平な分担」が必要で、「企業、行政、男性が変わらないと実現しない。家事分担は決して夫婦だけの問題ではない」と語る。

■愛情と相関

 パートナーが協力的かどうかは、夫婦関係にも影響を及ぼすことがある。ベネッセ教育総合研究所(東京)が08~09年に1歳児のいる夫婦322組に行った調査では、「子育てや家事などの分担を助け合っている」と感じる妻では、82%が「夫への愛情を実感する」と答えたが、それ以外では60%と、20ポイント以上低かった。

 子ども3人を育てるネイリストの女性(35)は、家事に協力的でない会社員の夫との離婚を一時考えたという。

 実家の父が家事を母任せにしていた分、「台所に並んで料理する夫婦」に憧れた。つきあっていた頃、まめで器用な夫はきっと結婚後に家の事をすると思い込んでいた。けれど実際は、子どもが泣いていてもスマホをいじっていたり、用事を頼んでも「今はしんどい」とやってくれなかったり。「こんな人だったの」とショックを受けた。

 2人目が生まれた頃から夫の仕事は忙しさを増し、帰宅が未明になることも。疲れ切って休日は眠り続け、ストレスで怒りやすくもなった。家事などの分担を話し合うどころではなかった。「相手に期待するのをあきらめた時、気持ちも冷めていた」

 けんかが高じて離婚話も出たが、子どものことを考えると、決断できなかった。夫も同じ思いだったのか、「家族との時間がもっとほしい」と昨年転職。帰宅も早くなり、気づけば洗濯物の片づけや食事の準備をしてくれている。

 「家事を分担し合えると、気持ちや時間を共有できていると感じて心が穏やかになる。私たち夫婦はこれからだ、と感じます」と女性は話す。

  <「逃げるは恥だが役に立つ」>  同名漫画が原作のTBS系ドラマ。主人公の女性が住み込みで家事をするため、恋愛経験のない会社員と契約結婚する物語。家事労働の対価を月給約20万円と算定する設定や、妻が家事を無償で行うことを「愛情の搾取」と訴える場面などが話題になった。

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 〒530・8551読売新聞大阪本社生活教育部「共に働く」係へ。ファクス(06・6365・7521)、メール(seikatsu@yomiuri.com)でも受け付けます。ツイッターは https://twitter.com/o_yomi_life_edu

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結婚、出産後も働き続ける女性が増える一方、育児との両立の難しさやキャリアアップを描きにくい現状はあまり変わりません。女性が真に活躍するために何が求められているのか。現代の「共働き事情」を描きます。

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