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在宅訪問管理栄養士しおじゅんのゆるっと楽しむ健康食生活

コラム

[東日本大震災と食](前編)避難所間で大きく開いた「食の格差」

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 もうすぐ、未曽有の大災害から7年が () ちます。

 2011年3月11日、私は仙台市内の自宅マンションにいました。生後1か月の次女に授乳をしていた時、「ゴゴゴゴ……」と地鳴りのような音が響き、カタカタカタ……と小さな揺れの後、体験したことのない大きな揺れが襲ってきたのです。あまりの揺れに、ソファから立ち上がることさえできません。一向に収まらない大きな地震に、当時2歳だった長女を抱き寄せ、何も知らずに母乳を飲み続ける次女を抱えたまま一歩も動くことができず、ただ (おび) えるしかありませんでした。あの日の出来事は、私の人生観を根底から覆し、「生きること」と「食べること」を見つめなおす機会となりました。

 今回は、東日本大震災後の調査から明らかになった、避難所における「食と栄養の問題」をご紹介します。後編では、自宅避難者となった私と家族が、友人らと助け合った10日間の食生活を振り返り、災害時にどのように「しのいだ」のかをお伝えします。

ノロウイルスやインフルエンザが流行

[東日本大震災と食](前編)避難所間で大きく開いた「食の格差」

津波にのまれたJR気仙沼線の旧大谷海岸駅で。この日の穏やかな海を前にして、引きちぎられた線路の残骸に言葉を失いました(2015年10月)

 日本栄養士会災害支援チーム(JDA-DAT:The Japan Dietetic Association-Disaster Assistance Team)は、被災地の食事の提供に影響を及ぼした要因を明らかにするため、東日本大震災から約1か月後、宮城県気仙沼市の全避難所における 食事調査 を開始しました。その結果、69の避難所のうち約80%で、食料が不足していたことが明らかになったのです。また、提供された食料は、主におにぎりや菓子パンなどだったため、たんぱく質の摂取が不足していることもわかりました。

 偏った食生活は、短期間で被災者の健康に悪い影響を及ぼしました。

 震災から数週間経って、各地の避難所でノロウイルスやインフルエンザが流行していることがニュースで伝えられるようになりました。水が不足してトイレや手洗いなどの衛生環境を保つことができないうえ、寒さに震えながら冷たい床に寝るなど、大変なストレスにさらされる毎日です。冷えたおにぎりやパンばかり食べていれば、免疫力は低下し、ウイルスや細菌などへの抵抗力が奪われます。体力のある大人ですら厳しい状況なのですから、子どもや高齢者は真っ先に体調を崩すでしょう。

加熱ができない避難所で状況悪化

 同じ調査では、避難所の収容人数が多いほど食事の回数が少なくなること、ガスが使えずに「加熱調理」ができない避難所では食事の量も質も悪くなることがわかりました。

 JDA-DATの「災害復興支援活動および日本栄養士会災害支援チームに関する報告書」によると、福島県のある避難所で同年3月末に提供されていた一日の食事は、次のような内容です。

【朝食】 ジャムパン

【昼食】 ピーナツパン

【夕食】 おにぎり2個とトン汁

【間食】 せんべい3枚 菓子パン1個 お水やお茶500~800ml

 この避難所は、炭水化物以外の食糧物資が少ない施設で、おにぎりや菓子パンが食べられない高齢者にはゼリーや果物が配布されていました。すでに地震発生から3週間が経った段階のものです。私なら生きる気力さえなくしてしまいそうです。糖尿病や腎臓病などの疾患や飲み込みに障害のある人への配慮はなく、水分だけ取っていた被災者もいたそうです。

 これに対し、十分な食料とガスなどの熱源がある避難所では、一日2回以上の栄養バランスの取れた温かい食事が提供できていました。

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塩野崎顔2_100

塩野崎淳子(しおのざき・じゅんこ)

 「訪問栄養サポートセンター仙台(むらた日帰り外科手術WOCクリニック内)」在宅訪問管理栄養士

 1978年、大阪府生まれ。2001年、女子栄養大学栄養学部卒。栄養士・管理栄養士・介護支援専門員。長期療養型病院勤務を経て、2010年、訪問看護ステーションの介護支援専門員(ケアマネジャー)として在宅療養者の支援を行う。現在は在宅訪問管理栄養士として活動。

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1件 のコメント

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温かいものがうれしい

なな

被災地では 温かいものが食べられるようになってうれしかった という声をよく見ます プロパンガスのメーカー、販売店に避難所にプロパンとプロパンのガ...

被災地では 温かいものが食べられるようになってうれしかった という声をよく見ます

プロパンガスのメーカー、販売店に避難所にプロパンとプロパンのガス台を支援物資として寄付してもらうことは出来ないんでしょうか?
 風よけ代わりに油跳ねガードも。
もしくは後日自治体が費用を払うから届けてくれ とか。

プロパンなら都市ガスと違って繋げばすぐ使えるし。
卓上コンロのガスボンベみたいにすぐ無くなっちゃう事もないし。
それがプロパンの強みでしょう?

ガスコンロがあればお湯が飲めるし、非常食、レトルト品も水でなくお湯で戻せる
赤ちゃんのミルクも作れるかも
カップ麺やカップスープも。
水、お茶は今ペットボトルがあるからまだマシ

震災の記事では残念なのもずいぶん見ました
 避難所である学校に車で避難したら 地方なので車社会
先生が「車では校庭に入れません」と入れなかったから大渋滞、 津波にのまれたとか
 炊き出しをしていたら「校内で火を使うなんて!」 と怒られた とか
地元の有志の主婦たちが避難所へ差し入れのおにぎりを作っていたら
保健所?が見に来て 衛生面は大丈夫ですか? 食中毒は と、あんに止めろと圧をかけてきた とても喜ばれてたのに、、、 と。

先生方は悪くなく まぁ、真面目なんですよね
普段は校庭車両進入禁止なのでしょう 津波が来ると思わなかったし
普段校内で火を使う事なんかないし、避難所が火事になったら大変
ただでさえ大変な時に避難所で食中毒がおきたら、、、

スーパーも停電で冷凍庫の電源が切れちゃったから冷凍食品捨ててた
なにかあったら困るから売ることもあげることも出来ないからって。
大手メーカーの工場生産品なら大丈夫そうだけど、、
都会からの支援物資はすぐには届かないしね

太陽光パネルのメーカーも避難所にパネル寄付してほしい
携帯、スマホが使えるだけで全然違うだろう

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