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共に働く

コラム

序章[データで見る]妻も仕事 今や多数派

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  日本は今や、「共働き社会」だ。夫婦ともに雇用されて働く世帯は、専業主婦のいる世帯の1・7倍に上る。高度経済成長を支えた「夫は外で働き、妻は家庭を守る」という家族のカタチは、劇的に変化した。一方で、妻に重くのしかかる家事や育児、長時間労働が当たり前の正社員のあり方、保育所の不足――と、夫婦それぞれが仕事と家庭を両立する上での課題は多い。妻と夫が共に働き続け、充実した生活を営むためには、何が必要なのか。一年を通して考えたい。

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共働き世帯 専業主婦世帯上回る

■1129万世帯

 総務省の統計によると、共働き世帯の数が、専業主婦のいる世帯の数を初めて上回ったのは1992年。97年以降は一貫して共働き世帯が上回り、2016年は1129万世帯に上る。

 男女雇用機会均等法の施行などにより、女性が正社員として働き続けることも珍しくなくなった。国や企業も仕事と家庭が両立しやすい環境作りを進めるが、一方で、保育サービスなどの整備が追いついていない実態もある。

 国は「働き方改革」を掲げ、長時間労働の是正や非正規労働者の待遇改善、待機児童の解消など、男女ともに働きやすい社会の実現に取り組むとしている。

家事・育児 男女で大きな差

■4時間46分

 内閣府によると、6歳未満の子を持つ夫婦が家事・育児関連に費やす1日当たりの時間(2016年)は、妻の7時間34分に対して、夫は1時間23分と欧米の主な国の半分以下だ。

 共働き世帯に限っても、妻は6時間10分、夫は1時間24分で、4時間46分の差がある。内閣府男女共同参画局は「日本の女性の家事育児の時間は長く、社会で活躍する時間が限られている」とする。

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 夫がどの程度家事を担うかは、次の子どもの出生にも関わる。厚生労働省によると、休日の夫の家事育児が「4時間以上6時間未満」の場合、8割の家庭で2人目以降が生まれていたが、「なし」では1割にとどまった。

子育て世代男性 年収減少激しく

■-82万円

 1990年代のバブル崩壊後、日本企業の特徴だった終身雇用や年功序列は大きく揺らいだ。国税庁の調査によると、民間企業で働く会社員らの平均年収は2016年は422万円で、ピークだった1997年から46万円減った。子育て世代の男性の落ち込みが激しく、40~44歳で82万円、35~39歳で77万円減った。

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 経済の停滞は非正規で働く男性の割合(総務省調べ)も増やした。2016年は22%と30年前(7%)の約3倍になった。一方で、男女の賃金格差は縮小している。男性の賃金を100とした時の女性の賃金(厚生労働省調べ)は、1986年の59.7から2016年には73.0に上がった。

夫婦の形 時代で変化

筒井淳也さん 立命館大教授(家族社会学)

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 今の学生と話していると、共働きが当たり前になっていると実感します。女性は「働き続けたい」というよりも、「働き続けないとやっていけない」という意識が目立つ。男性に「将来、家庭を持った時、妻が仕事を辞めると言ったらどう思う?」と聞いたら、大抵「すごく困る」という答えが返ってくる。自分1人の稼ぎで家計を賄える自信がない、と言うのです。

 しかし、共働きの夫婦形態が主流となったのはちょうど学生たちが生まれた頃で、それまでは「男性が外で稼ぎ、女性は家事を担う」という専業主婦世帯の方が多かった。

 専業主婦が生まれたきっかけは産業の近代化でした。大半の人が農家や自営業など、家で仕事をしていた時代は、男性も女性も何らかの形で家業に携わっていた。しかし、雇われて工場などで働く労働者が増え、夫婦ともに働きに出ると、家庭生活に支障が出るため、それぞれで役割分担するようになったのです。

 専業主婦世帯は、経済が早くに発展した欧州では20世紀に入る頃にはすでに一般的になっていた。一方、日本では戦後の高度経済成長に合わせて増えていきました。

 1980年代に入ると、欧州では再び共働き社会に転換します。景気の低迷で多くの男性が失業し、生活を安定させるために妻も働く必要性が出てきたからで、両立支援などの制度改革も進みました。

 しかし、日本では80年代はまだ家電業界を中心に経済が好調で、給料も上がっていた。86年に施行された男女雇用機会均等法も、「長時間労働」「転勤あり」という男性的な働き方に女性が合わせるもので、働き方を改めるという議論には至らなかった。

 ただ、実際こんな働き方を夫婦そろってするのは極めて難しい。結婚・出産などを機に多くの総合職の女性が仕事を辞めました。その後、90年代後半に若者の雇用が不安定になり、賃金が毎年上がるという実感も失われて、ようやく女性の両立支援に目が向けられるようになりました。

 少子化や労働力減少の問題を抱える日本においては共働き社会は当面の目指すべき方向性でしょう。女性の就業率が高かったり、男女の賃金格差が小さかったりと、共働き社会がある程度実現している国では、出生率も高いというデータがある。共働きの方が所得も増え、安心して子どもを産み、育てられるからです。

 そのためには、長時間労働の是正や転勤の縮小など、これまでの男性的な働き方を男女ともに改めることが必要。人手不足の企業などで経営が厳しくなるといった副作用も出るかもしれませんが、恐れていては何もできない。変革と対策をセットで進める政治が求められます。

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 〒530・8551読売新聞大阪本社生活教育部「共に働く」係へ。ファクス(06・6365・7521)、メール(seikatsu@yomiuri.com)でも受け付けます。ツイッターは https://twitter.com/o_yomi_life_edu

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tomonihataraku-500

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結婚、出産後も働き続ける女性が増える一方、育児との両立の難しさやキャリアアップを描きにくい現状はあまり変わりません。女性が真に活躍するために何が求められているのか。現代の「共働き事情」を描きます。

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