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認知症の行方不明者に「スマホ捜索網」、発信器の電波を住民ら受信

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認知症の行方不明者に「スマホ捜索網」、発信器の電波を住民ら受信

京都府長岡京市が配布している小型発信器。靴やかばんなどに取り付け、居場所の把握に活用される

 認知症の行方不明者が年間1万人を超える中、高齢者らに小型発信器を付けてもらい、不明時の捜索に活用するシステムが各自治体で相次いで導入されている。発信器の電波をキャッチし、位置情報を知らせるのは、事前に登録された地域住民らのスマートフォン。登録者が増えるほど街中に〈捜索網〉が広がる仕組みで、実際に早期発見につながるなど効果を発揮している。(松永喜代文)

 

捜索依頼があった全員、無事保護

 

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 「独居の男性が家にいない。 徘徊はいかい しているのではないか」

 昨年12月、京都府長岡京市の高齢介護課に、弁当配達業者から連絡が入った。

 男性は80歳代。同課の職員がパソコンに登録番号を入力すると、画面上に複数の町名などが表示された。いずれも男性が外出後、通過した場所の履歴だ。

 最後に通った場所に数人の職員が急行。しばらく付近を捜し、路上を歩いている男性を見つけた。自宅からの距離は約2キロ。手がかりになったのは、男性の靴に取り付けられた発信器で、その電波を拾ったのは、たまたま近くにいた市民のスマホだった。

 同市は2016年2月以降、希望する家庭に、近距離無線通信(ブルートゥース)用の発信器を約120人分、無料で配布。電波が届くのは半径15~30メートルの範囲で、これを感知する受信装置を電柱や商店など計36か所に設置してきた。

 ただ、これだけでは電波を拾う精度は低い。そこで市は、スマホで電波を受信できるよう、発信器を作った企業が開発した専用アプリを活用。市民にインストールするよう呼びかけ、登録者は1500人に達した。

 発信器の配布先の家庭から捜索依頼があると、市が登録者にメッセージを送信。登録者がアプリの機能をオンにすれば、スマホが「移動する受信装置」の役割を果たすようになる。

 先月末までに10人の捜索依頼があり、全員がシステムの位置情報を手がかりに発見された。同課の担当者は「登録者をさらに増やしたい」と精度向上を目指す。

タクシー運転手のスマホにも…

 

 高齢者の徘徊対策を巡っては、GPS(全地球測位システム)端末も利用されているが、大きさの面から携帯してもらうのが簡単ではなく、頻繁に充電が必要という課題もあった。このため、市民のスマホを使った同種システムの開発に、企業の参入も相次いでいる。

 警備大手・綜合警備保障(東京)は16年から、国のモデル事業の一環で全国10市町と提携。北九州市では、一般市民だけではなく、地元のタクシー会社にも協力を依頼し、運転手のスマホに専用アプリをインストールしてもらっている。

 奈良県の生駒、天理両市では、路線バスに受信装置の設置を計画中だ。

 認知症薬を手がける製薬会社・エーザイ(東京)もIT企業と組み、広島県竹原市などで実証実験を実施。今後、啓発事業で提携する各地の自治体に導入を働きかけるという。

 

冬は高リスク、早期発見が命救うカギ

 

 警察庁によると、2016年の認知症行方不明者は、前年比26・4%増の1万5432人。死亡して見つかったのは471人だった。

 用水路に転落したり、徘徊を続けて低体温症に陥ったりしたケースが多く、鈴木隆雄・桜美林大教授(老年学)は「冬は最も死亡リスクが高い。早期発見できるかどうかが生死を左右する」と指摘する。

 全国に支部を置く「認知症の人と家族の会」(京都市)には、家族が行方不明のまま長期間、気持ちの整理がつかずに待ち続ける人からの相談も少なくない。鈴木森夫・代表理事は「不明者を減らすには、市民の意識の高まりが欠かせない。お年寄りへの声かけなど見守りの目を広げてほしい」と期待する。

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