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いのちは輝く~障害・病気と生きる子どもたち

コラム

トリソミーの赤ちゃんに「積極治療するな」 クラス分けで見捨てられる命

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 染色体に異常がある13トリソミー、18トリソミーの子どもたちの命を考える際に、「東京女子医科大学新生児集中治療室における治療方針決定のクラス分け」を避けて論じることはできません。このクラス分けは、重篤な病気・障害を負った新生児をどこまで治療するか、あるいは治療を打ち切るかを、家族と共に深い議論の末に決定し、それに応じてどのような医療を行うかを示したものです。1987年に学術雑誌に掲載されました。以下にクラス分けの具体的な内容を記します。

クラスA:あらゆる治療を行う
クラスB:一定限度以上の治療は行わない(心臓手術や血液透析など)
クラスC:現在行っている以上の治療は行わず、一般的養護(保護、栄養、 清拭せいしき および愛情)に徹する
クラスD:すべての治療を中止する

 このクラス分けで、13トリソミーと18トリソミーは「クラスC」の例に挙げられています。クラスCは言い方を変えれば積極的な治療はしないということです。つまり外科的な病気があっても手術はしないという考え方です。

 このクラス分けは、1990年代に日本中の新生児科に広まり、あたかもガイドラインのように広く使われてきました。その結果、13トリソミー、18トリソミーの赤ちゃんに手術をすることはタブーとなっていきました。

手術したことを非難したベテラン医師たち

 私は1993年に、18トリソミーの赤ちゃんに対して先天性食道閉鎖の手術を行ったことがあります。その日は休日で、新生児科の当直は研修医一人でした。赤ちゃんの顔貌から18トリソミーの疑いはあったものの、食道閉鎖は1日経過を見ているうちに重篤な肺炎を併発するリスクがあるため、手術に踏み切りました。胸を開いて閉ざされた食道を縫い合わせ、無事に終えることができました。術後にミルクを流し込むルートとして 胃瘻いろう チューブも胃に挿入しました。

【名畑文巨のまなざし】ダウン症のタペロくん、3人のお姉ちゃんたちと一緒に、庭にある小屋で撮りました。子どもの遊び場にしている小屋の中は、まるで秘密基地のよう。タペロくんはまさに隊長です。動物の鼻のおもちゃをつけて「ふむふむ」とか言っています。お姉ちゃんたちが、 呆(あき) れながらも一緒に遊んであげている姿に、飾らない愛情を感じました。南アフリカ共和国プレトリア市にて

【名畑文巨のまなざし】
 ダウン症のタペロくん、3人のお姉ちゃんたちと一緒に、庭にある小屋で撮りました。子どもの遊び場にしている小屋の中は、まるで秘密基地のよう。タペロくんはまさに隊長です。動物の鼻のおもちゃをつけて「ふむふむ」とか言っています。お姉ちゃんたちが、あきれながらも一緒に遊んであげている姿に、飾らない愛情を感じました。南アフリカ共和国プレトリア市にて

 翌朝、新生児科のベテランの先生たちが続々と出勤してきました。彼らは赤ちゃんの顔を見るなり、この子は18トリソミーだと断言し、私を強く非難しました。

 「顔を見れば分かるでしょ? 何で手術したの?」

 「18トリソミーはクラスCだよ。手術なんかしちゃだめだよ」

 若手外科医だった私は何も言い返せませんでした。数日後、染色体検査の結果が届きました。やはり18トリソミーでした。ミルクを与えるほかは、点滴だけを施すという治療方針になりました。そのミルクも「口から飲む」という決定になりました。胃瘻チューブは、上司の命令にしたがい私が自分で抜きました。

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inochihakagayaku200

いのちは輝く~障害・病気と生きる子どもたち

 生まれてくる子どもに重い障害があるとわかったとき、家族はどう向き合えばいいのか。大人たちの選択が、子どもの生きる力を支えてくれないことも、現実にはある。命の尊厳に対し、他者が線を引くことは許されるのだろうか? 小児医療の現場でその答えを探し続ける医師と、障害のある子どもたちに寄り添ってきた写真家が、小さな命の重さと輝きを伝えます。

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松永正訓(まつなが・ただし)

1961年、東京都生まれ。87年、千葉大学医学部を卒業、小児外科医になる。99年に千葉大小児外科講師に就き、日本小児肝がんスタディーグループのスタディーコーディネーターも務めた。国際小児がん学会のBest Poster Prizeなど受賞歴多数。2006年より、「 松永クリニック小児科・小児外科 」院長。

『運命の子 トリソミー 短命という定めの男の子を授かった家族の物語』にて13年、第20回小学館ノンフィクション大賞を受賞。著書に『小児がん外科医 君たちが教えてくれたこと』(中公文庫)、『呼吸器の子』(現代書館)など。2017年11月、『子どもの病気 常識のウソ』(中公新書ラクレ)を出版。

ブログは http://wallaby-clinic.asablo.jp/blog/

名畑文巨(なばた・ふみお)

1958年、大阪府生まれ。外資系子どもポートレートスタジオなどで、長年にわたり子ども撮影に携わる。その後、作家活動に入り、2009年、金魚すくいと子どもをテーマにした作品「バトル・オブ・ナツヤスミ」でAPAアワード文部科学大臣賞受賞。近年は障害のある子どもの撮影を手がける。世界の障害児を取材する「 世界の障害のある子どもたちの写真展 」プロジェクトを開始し、18年5月にロンドンにて写真展を開催。大阪府池田市在住。

ホームページは http://www.fumionabata.com/index.html

名畑文巨ロンドン展報告

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5件 のコメント

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助からない命の価値は社会とどう繋がるか?

寺田次郎 六甲学院放射線科不名誉享受

そもそも、「医師は命を救う仕事で尊い」と一般人も医師の一部も信じている問題が根幹にあります。 だからこそ、「トリソミーの検査で黒のトリアージタグ...

そもそも、「医師は命を救う仕事で尊い」と一般人も医師の一部も信じている問題が根幹にあります。
だからこそ、「トリソミーの検査で黒のトリアージタグがつけられてしまった子供の価値が奪われてしまう」わけですが、その分水嶺がどこにあるかどうかの判断の主体性は実は難解な問題です。
考えない方が、無視する方が楽ですよね。
自分の正義に酔う方が楽で良いです。
これは流行のブラック医局の問題も一緒です。

色んな正義がある中で、命を救いたい医師も、命を諦めさせる医師、それぞれを冷静にバックアップする医師も必要で、それぞれがそれぞれの正義を暴走させない仕組みが大事になります。

ある種の正義にフォーカスしすぎると、他の判断材料が失われるのは多くの人間の真実です。
命や健康の問題は数だけでは語れませんが、最大多数の最大幸福や最小不幸というのはある程度原則ではあります。

どういう医療や教育、就労環境を提供するかという問題に繋がってきます。
医学の専門知識だけでなく、様々な人間の願望や行動様式を知って、より良い対応を考えていくことが大事です。

また、トリソミーの話に限れば血液検査ですが、超音波やMRIによる胎児の診断もより高精度になっています。

その中で、中絶のルールやなんかも変更が迫られるかもしれません。
母体保護法という法律の通り、子供も親も大事なわけで、その為にどういう仕組みを整えていくか、患者さんの意識ともすり合わせながら医療内外から再構築する必要があります。

高齢化社会や自殺や発達障害疑いの問題、高度文明化社会における再教育も含めて、実は医療だけに留まらない社会問題だと分かります。

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未来へ繋げられる命を守る事も許されるべき

ヘルパー母

障害と向き合う沢山の方々が、それぞれ苦悩されている様を見てきましたが、批判される事を承知であえて申し上げたい。 人間も生き物です。生き物として生...

障害と向き合う沢山の方々が、それぞれ苦悩されている様を見てきましたが、批判される事を承知であえて申し上げたい。
人間も生き物です。生き物として生まれたからには自分の授かった命を健やかに次世代へとつなげる事が人生最大の目標、責務であると思われます。
遺伝子のエラーで重度の障害を持つ子が誕生した場合、現代では結果としてその親が人生のほとんどを犠牲にして子の命を長らえさせ続ける様な状況となります。
それは一見尊い行いではありますが、特にその子を生かすために親が他の子を産み育てる力を失ってしまう場合には、結果として親二人の先祖から続いてきた血脈を途絶えさせ、本来次の子に恵まれたなら生まれる可能性があった子孫の未来までも奪われている状況だとも言えます。

医学の進歩によって命が助かる可能性が増え、救える者は全て救いたいと思われる医療関係者の皆様の考えも尊いのですが、例え最善の医療でその子自身は救えたとしても、その子の子孫は望めないとか、次世代にまで遺伝上の大きなダメージが及ぶと確定される場合などは、現実として親子の将来をおもんぱかった上で、不幸な子一人の運命に引きずられないという選択肢と、その選択の最終決断の権利が親に認められても良いのではと思います。
もっとも、上記の様な検討はすでに成された上で、クラス分けという一見非情な方針が設定されたのだと思われますし、心ある医療関係者の方々には誠にお辛い仕事とは存じますが、最終決断権が親御様である限り、その結果については医師の方が負うべきものではありませんので、親御様の御意思が尊重される事を望んでやみません。

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出生前診断

コウノドリ

確かに医療技術は進歩したでしょう。当時の考えは古いのかもしれません。 しかし、一方では出生前診断が認められるなど親側の意識も変化していないでしょ...

確かに医療技術は進歩したでしょう。当時の考えは古いのかもしれません。
しかし、一方では出生前診断が認められるなど親側の意識も変化していないでしょうか。聞けば異常を診断されたうちの9割は中絶を希望したとの統計があるようです。もちろん診断を受けた人はあらかじめそういう覚悟があってのことで全体の意思を反映しているわけではありませんが。
また日本の産婦人科学会は検査に消極的のようですが、イギリスやアメリカは積極的に推奨しているとも聞きます。この違いはどこにあるのでしょうか。
幅広く意見を紹介していただきたいと思います。

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