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映画監督 大林宣彦さん

一病息災

[映画監督 大林宣彦さん]肺がん(4)あと30年は映画撮る

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 昨年3月。編集作業中、がんの脳への転移がわかった。驚いたが落胆や絶望はなかった。「戦争じゃないんだ。がんごときに殺されてたまるか」。幸い10日間の放射線治療で脳のがんはほぼ消えた。

[映画監督 大林宣彦さん]肺がん(4)あと30年は映画撮る

 昨年12月16日、映画「花筐/HANAGATAMI」が公開された。東京都内での舞台あいさつでは、こう切り出した。「あと30年は映画を撮ります」

 治療の副作用で髪の毛は抜け、体重は20キロも落ちたが病状は落ち着いた。この日も つえ こそついていたが、言葉と目には力がこもっていた。「花筐」で、昨年の映画誌キネマ旬報監督賞を受賞した。

 次回作は、原爆がテーマという。映画界の先輩たちから託されたたすきをつなぐ――そんな思いがある。

 30年ほど前、黒沢明監督から「映画には平和をもたらす力がある。俺はもう80歳だ。少しずつでも俺の先をやってくれ」と言われたという。そして映画監督の新藤兼人さんが、原爆投下後のピカとドンの間の数秒を2時間の映画にしようとシナリオを書いたが、資金20億円を集められないまま2012年に亡くなったのも目の当たりにした。

 「僕なりのやり方で原爆を描きたい」。貯金は「花筐」で使い果たしたという。「まずは資金集めから。忙しくなりそう」と話す。

 (文・竹井陽平、写真・萩本朋子)

  映画監督 大林宣彦さん(80)

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