科学
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膵管と胆管の合流異常、早期発見でがん予防
発生、数千人に1人
膵管と胆管は通常、別々に十二指腸につながり、食べ物の消化を助ける膵液と胆汁を腸内に、それぞれ流し込んでいる。
膵管と胆管が合流していると、送り出す圧力の強い膵管から膵液が胆管に流れ込む。膵液と胆汁が混ざり合うと非常に刺激性の強い物質が発生し、胆汁を一時的にためる胆のうや胆管、膵臓に様々な悪影響を与える。1980年頃から注目され、医師による研究会が患者の登録などを行っている。
東京都立駒込病院(文京区)副院長の神沢輝実さん(消化器内科)によると、合流異常の発生率は、数千人に1人。胆管にふくらみがある「拡張型」とふくらみのない「非拡張型」の二つにタイプが分けられる。
拡張型は合流異常の6割を占め、乳幼児や子どもの頃に発見されることが多い。膵液と胆汁の混合液が、腸にスムーズに排出されず、胆管の中で頻繁にたまって炎症を起こし、腹痛や発熱、黄だんなどが表れる。
無症状の場合もあり、成人になって人間ドックの腹部超音波検査で胆管が異常に太いことから分かることもある。約2割ががんを発症するというデータがあり、研究会の診療指針は二つの管を正常な形に近づける手術を勧めている。手術は胆管のふくらんだ部分と胆のうを切除し、腸につなぎ直す。
非拡張型では、胆のうの中に膵液と胆汁の混合液がたまる。拡張型のような激しい症状が表れにくく、早期の発見が難しい。胆のうに慢性の炎症が生じ、がんを引き起こす。がんの発症率は約4割。指針は胆のうの切除手術を推奨している。
内田さんは非拡張型。市の定期健診で再検査となり、駒込病院でコンピューター断層撮影法(CT)検査を受けた。この結果、胆のうの壁が慢性の炎症で厚くなっているのがわかった。
摘出手術で正常に
医師に手術を勧められた際、「自覚症状もないのになんで」と拒んだが、医師から「がんになる恐れが高い」と説得されて応じた。
国立がん研究センターによると、胆のうがん・胆管がんの5年生存率は27%。毎年約1万8000人が死亡している。胆のうがん・胆管がんは本来、50歳以上で多く見られるが、合流異常の人では40歳代でも発症する。
内田さんは「がんになる前に合流異常が見つかることはめったにないと聞き、幸運でした」と振り返る。手術はいずれも公的保険が利く。
神沢さんは「がんの発症率が高いだけに、合流異常をいかに早く見つけるかが予防手術につなげるポイントになる。人間ドックで胆のうの壁が厚いなどの異常が見つかったら、消化器内科を受診してほしい」と指摘している。
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