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ドナー待つ20歳が無念の死 ゲーム仲間が追悼「臓器移植 考えるきっかけくれた」

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鈴木希 医療部

 重い心臓病を患い、心臓移植の機会を待っていた川崎市の大学生、 鈴木(すずき)大樹(たいき) さんが昨年12月26日に20歳の若さで亡くなりました。彼の死を通し、命の尊さや移植医療の現状を知ってもらえればと思い、その2日後にヨミドクターに掲載した記事は、たくさんの人に読んでいただくことができました。

取材からわずか2週間後に…

臓器ドナー待つ20歳が無念の死 ゲーム仲間が追悼「移植 考えるきっかけくれた」

亡くなった鈴木大樹さんが毎年、一家で撮影していたという家族写真の数々。一番下が昨年12月に撮影したもので、左から3人目が大樹さん(母の緑さん提供)

 大樹さんと私の出会いは、新聞記事の取材がきっかけでした。亡くなる2週間ほど前の12月14日、読売新聞朝刊のくらし家庭面に常設されている「医療ルネサンス」というコーナーに出た記事です。

 昨年は臓器移植法がスタートして20年の節目に当たりました。そのため何回か特集を組んでいて、12月は「生きたい」というテーマの連載をしていました。その一環でお願いした取材の中で、「将来は社会福祉士として病気の人の役に立ちたい」と夢を語ってくれた大樹さん。こんなに早く別れがやってくるなんて……そんな思いで書いたのが、暮れにヨミドクターに掲載した記事だったのです。

 多くの反響がありましたが、その中には、大樹さんがアプリゲームを通じて知り合った仲間もいました。ネット上で全国の参加者と対戦したり、会話したりできるゲームです。大樹さんは「ごましお」と名乗ってグループを作り、「人を非難しない」「自分を責めない」などのルールを設けて交流していました。

アプリ上に「ごましおくん、ありがとう」

 訃報を知ってすぐ、仲間3人が大樹さんの自宅に駆けつけました。アプリ上では、仲間たちのグループがリーグ戦で1位となり「ごましおくん、ありがとう」というメッセージを表示して追悼しています。

 年明けに行われた大樹さんの葬儀では、仲間の1人から送られた、こんな弔電が読み上げられました。

 「ごましおさんのような 素敵(すてき) な人がこんなに早く逝ってしまうことに胸が締め付けられる思いです。移植や臓器提供のこと、たくさんの人が考えるきっかけを作ってくれたごましおさんはとてもすごいです」

 大樹さんは高校1年生で病気がわかり、3年生の時、心臓のポンプの役割をする補助人工心臓を体内に植え込みました。3年生のときはほとんど登校できませんでしたが、時には先生とのかけ合いでクラス中を笑わせるようなムードメーカー。スポーツ好きでもあり、とても活発な生徒でした。

 親友の1人は、葬儀で思い出を振り返りました。焼き鳥屋さんで語り合ったこと、温泉旅行で、手術痕を気にしていた大樹さんを夜に浴場に連れ出し、服を着たまま足だけ温泉に浸かったこと……。

 「もっといろんな経験と感動を、大樹と分かち合いたかった」

 そんな親友でも、大樹さんの病気がこれほど大変なものとは思わなかったそうです。大樹さんは特別扱いが嫌で、周囲に気を使わせたくないからと「苦しい」「つらい」と、ほとんど口にしなかったのです。

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