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医療・健康・介護のニュース・解説

事故繰り返すリピーター医師 「野放し」ではいけない!

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いまもどこかで医師を継続?

 ところが、その後まもなく、この医師は愛媛県から離れた別の県にある医療機関で、産婦人科医として働き、再びお産を手がけようとしていたといいます。そのこと自体は実現しなかったようですが、お産に携わらないまでも、いまもどこかで医師を続けていることでしょう。ここからうかがえるのは、医師本人が、問題を問題として認識することさえできていなかったのではないか、ということです。そうだとすれば、同じことがさらに繰り返されかねない危うさを感じます。

 このままでは、事故の教訓を今後の医療に生かすこともかなわないのではないでしょうか。この産婦人科診療所の問題は、亡くなった方の遺族が表だって被害を訴え出なかったこともあり、何年も明るみに出ず、改善策がとられないままでした。産婦人科医の団体にとっても、地方の一診療所で何が起こっているのかを把握するのは容易ではないようです。日本産婦人科医会は再発防止のため、妊産婦死亡の報告制度を設けていますが、強制力はなく、自浄機能には限界があります。愛媛の件も、報道側の情報で知ったというのが実情なのです。

問題のある医師には適切な対応を

 問題が発覚してもなお、このリピーター医師は行政処分を受けていません。行政処分となれば再教育も義務づけられますが、もちろんそれを受けてもいないわけです。リピーター医師の存在は以前から指摘され、問題視されてきました。しかし、過去に行政処分された例は、12年に戒告処分が1件あるだけです。

 多くの医師は真剣に患者と向き合い、適切な医療を行っていると思いますが、なかには、問題を抱えた医師が存在するのも事実です。問題をどう把握し、再教育につなげるか、また、いまの処分制度やその運用状況、再教育の内容が適切なのかどうかも含めて、検討すべき課題はたくさん残っています。

【群馬大学病院の手術死問題】

 群馬大学病院第二外科で、同じ医師が執刀した肝臓の腹腔鏡ふくくうきょう手術を受けた患者8人の死亡が2014年11月に発覚した。いずれも保険適用外の高難度手術で、必要な倫理審査も通していなかった。その後、開腹手術の患者にも死亡が続発していたことが判明。このことは社会的に大きな問題となり、第三者からなる調査委員会が発足して調査が行われた結果、診療に数々の問題があったことを示す報告書が16年7月に発表された。大学側は問題を認めて謝罪し、病院改革に取り組むとともに、遺族への説明や補償を進めてきた。執刀医と元教授は大学から解雇(執刀医=懲戒解雇相当、元教授=諭旨解雇)されて1年後の17年7~8月、問題が発覚してから初めて遺族と面談した。

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高梨 ゆき子(たかなし・ゆきこ)
読売新聞医療部記者。
社会部で遊軍・調査報道班などを経て厚生労働省キャップを務めた後、医療部に移り、医療政策や医療安全、医薬品、がん治療、臓器移植などの取材を続ける。群馬大病院の腹腔鏡手術をめぐる一連のスクープにより、2015年度新聞協会賞を受賞。著書に「大学病院の奈落」(講談社)がある。

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