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群大手術死 再教育なく医療継続 このままでよいのか?

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落ち度はないかのような話しぶり

 この2人が、遺族会から「反省の色がない」と指摘されたことも、重く受け止めざるを得ません。遺族会によると、昨年7~8月、問題が発覚してから初めて遺族と対面した執刀医と元教授は、第三者の調査委員会から指摘された数々の診療上の問題のうち、カルテの記載が不十分だったことしか非を認めず、患者へのインフォームド・コンセント(説明と同意)や術後の管理などについて、落ち度はないかのような話しぶりだったそうです。当時としては「精いっぱいやった」というのです。

 このほか、遺族の方々や弁護団が、印象に残った話として語ったことがあります。それは、執刀医の技術に対して、元教授が「レベルが高い」と認識していたことです。弁護団が手術の録画映像を協力医に見てもらった結果や、日本外科学会による検証からは、執刀医の技量にはかなり問題が指摘されていただけに、この認識の隔たりに遺族らは驚いたのでしょう。

厚労省は遺族の要望を受け止めて

 遺族会は「再発防止の観点から、行政処分を受けて再教育する必要がある」という判断をせざるを得なくなり、昨年9月、厚労省に彼らの行政処分を求める要望書を提出したのです。厚労省には、遺族のやむにやまれぬ決断を 真摯(しんし) に受け止め、しかるべき対応をしてほしいものです。病院の組織や体制の問題が大きかったことも事実ですが、では個人には全く問題なかったのかというと、そうではないでしょう。例年、年度末の3月には新たな行政処分の発表があります。その行方を注視しています。

【群馬大学病院の手術死問題】

 群馬大学病院第二外科で、同じ医師が執刀した肝臓の腹腔鏡ふくくうきょう手術を受けた患者8人の死亡が2014年11月に発覚した。いずれも保険適用外の高難度手術で、必要な倫理審査も通していなかった。その後、開腹手術の患者にも死亡が続発していたことが判明。このことは社会的に大きな問題となり、第三者からなる調査委員会が発足して調査が行われた結果、診療に数々の問題があったことを示す報告書が16年7月に発表された。大学側は問題を認めて謝罪し、病院改革に取り組むとともに、遺族への説明や補償を進めてきた。執刀医と元教授は大学から解雇(執刀医=懲戒解雇相当、元教授=諭旨解雇)されて1年後の17年7~8月、問題が発覚してから初めて遺族と面談した。

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高梨 ゆき子(たかなし・ゆきこ)
読売新聞医療部記者。
社会部で遊軍・調査報道班などを経て厚生労働省キャップを務めた後、医療部に移り、医療政策や医療安全、医薬品、がん治療、臓器移植などの取材を続ける。群馬大病院の腹腔鏡手術をめぐる一連のスクープにより、2015年度新聞協会賞を受賞。著書に「大学病院の奈落」(講談社)がある。

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