安田記者の「備えあれば」
医療・健康・介護のコラム
財産管理 早めに検討
昨年12月から、後見制度(任意後見、法定後見)と家族信託の基本をお伝えしてきました。もう少し違いや特徴を説明します。
いずれも、認知症になり判断能力が衰えた時に、信頼できる人に財産管理を任せるしくみです。判断能力が低下すると、預金を下ろす、自宅売却の契約をするといったことができなくなります。家族であっても勝手には代行できません。そこで、後見制度や家族信託が必要になるのです。
後見制度では、判断能力が低下してから亡くなるまでの間、後見人が財産を守ってくれます。判断能力が衰える前や、亡くなった後は対象外です。
家族信託は、判断能力が十分な時からでも、信頼できる家族に財産管理を任せることができます。本人が亡くなった後の相続や、その後の財産管理についても、契約で決めておけます。
また、後見制度はあくまで、判断能力が衰えた本人の財産を守るのが目的です。リスクを伴う運用などはできません。家族信託ならば、契約により運用も可能です。家族信託普及協会では「家族間でよく話し合って決めることが前提なので、家族信託の契約は、判断能力があるうちにしかできません。早めに話し合うことが必要です」と強調しています。
ただ家族信託では、信頼して財産を託せる人がいない場合、契約は難しいでしょう。一人暮らしで頼れる身内もいない、家族全員が財産を狙って対立している――といったケースです。
そうした人には、任意後見が向いています。任意後見人は、家族だけでなく、司法書士や弁護士などにも依頼できます。判断能力があるうちに契約し、判断能力が衰えたら、後見人になってもらうのです。
一方、法定後見は、判断能力が低下してしまった後に、家族などが家庭裁判所へ申し立てて後見人を決めてもらうしくみです。判断能力が衰える前に自分で契約を結ぶ家族信託や任意後見とは、ここが大きく違います。認知症にあらかじめ備えるためには、家族信託か任意後見を検討するとよいでしょう。(社会保障部 安田武晴)
このコラムでは、父親を見送った記者(48)が、最期に備えるための情報をお伝えしています。
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