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群大手術死 医師はなぜ行政処分されない

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 高梨ゆき子 医療部

 問題を起こした医師への行政処分について、厚生労働省が1月25日、新たな処分者28人を発表しました。今回は「精神保健指定医」という資格の不正取得に関与していた医師が対象であり、群馬大学病院の手術死問題で手術を執刀していた医師と上司だった元教授は入っていませんでした。執刀医と元教授は、行政処分の対象にならないのでしょうか。

「反省の色が見られない」 遺族は行政処分を要望

執刀医と元教授を行政処分するよう厚労省に要望書を提出した後、記者会見する遺族会と弁護団(2017年9月、厚労省で)

執刀医と元教授を行政処分するよう厚労省に要望書を提出した後、記者会見する遺族会と弁護団(2017年9月、厚労省で)

 亡くなった患者の遺族会は昨年、この2人に対する行政処分や再教育を求めて厚労省に要望書を出しましたが、その後、これといった動きはない状態です。

 「あれだけの問題を起こしたのに、なぜ医師として何のペナルティーもないのか」

 それは遺族会の方々が抱える共通の思いですが、同時に、誰もが持つ一般的な感覚ではないでしょうか。

 遺族会は2016年6月の設立当初から、執刀医と元教授に直接説明してほしいと求めてきましたが、一連の手術死に対する第三者の調査終了から1年がたった昨年夏、ようやくそれが実現しました。しかし、彼らは「反省の色が見られない」様子だったといいます。このため、遺族会は昨年9月、行政処分を要望したのです。

 遺族会代表の木村豊さんは「心から反省してくれていたら、処分は求めなかったと思う」と話していました。しかし、2人は調査報告書で指摘された診療上の問題のうち、カルテ記載が不十分だったこと以外、問題とは認めなかったのだそうです。

 「これでは同じようなことが繰り返されかねない」。そう遺族は考え、処分を求める選択をしました。

「大野病院事件」の経験から警察は慎重に

 医師の行政処分は主に、刑事罰を受けた医師に対し、それを追認する形で行われてきました。診療報酬の不正請求や詐欺のほか、重大な交通事故を起こしたとか、わいせつ事件を起こしたとか、診療行為とは直接関係ないものがほとんどです。医療事故が社会問題になった2000年代にルールが見直され、刑事処分が確定していない医療過誤の事例でも、行政処分の対象とする方針が示されてはいますが、実例はあまりありません。

 近年では、医療事故が刑事事件化するケースもほとんどなくなりました。契機となったのは、福島県立大野病院事件です。帝王切開のお産で母親が死亡し、産科医が逮捕、起訴されたこの事件は、医療界の猛反発を受けました。08年には、医師の無罪が確定しています。それ以来、医療事故の捜査には、ことのほか慎重姿勢がとられるようになったのです。

 大野病院事件への反発は、医療の専門家でない警察が介入することで、悪質性の低い通常の医療事故までも医師の刑事責任が問われるのではないかという不安によるものでしょう。刑事事件になれば個人の責任追及が主眼となり、真の原因究明や再発防止につながりにくいという問題もあります。

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