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宋美玄のママライフ実況中継

コラム

丸岡夫妻の代理出産 「祝福の声」に感じる社会の変化

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丸岡夫妻の代理出産 「祝福の声」に感じる社会の変化

雪が積もって大喜びの娘です

 フリーアナウンサーの丸岡いずみさんと映画評論家の有村昆さんの夫妻が、ロシア人女性の代理出産によって第1子を授かったことを公表しました。夫妻は不妊治療を試みましたが、流産を繰り返す不育症のため、最終的に代理出産を選んだとのことです。ブログには、ロシアで育児を始めた様子がつづられています。本当に幸せそうで、よかったなあと思いながら読みました。

受容されつつある「子を持つことの多様性」

 このニュースへの反応を見ていますと、素直に「おめでとう」というものがほとんどのようです。丸岡さん夫妻は、批判を受けるのを覚悟の上で代理出産を公表したそうですが、実際はそれほどでもなかったのではないでしょうか。

 数年前に同じような年齢の著名人が卵子提供を受けて妊娠・出産した時は、批判の嵐だったことを考えると、「親になることの多様性」について理解が深まってきたのかもしれません。つまり、「夫婦の精子と卵子で授かった子を母親が自分で産む」という一般的なケースだけでなく、精子や卵子の提供を受けたり、代理出産をしたり、LGBTのカップルだったり、シングルだったり、生殖年齢を超えていたり……と、様々な形があっていいと考える人が増えているのではないでしょうか。

 もちろん、精子や卵子の提供を受ける場合は「子供の出自」という問題が生じますし、代理出産は金銭と引き換えに他の女性に妊娠出産のリスクを負わせている面があります。これらは決しては無視できません。しかし、多様な方法で親になる人が増えていくことは、「こうでなければいけない」という固定観念が溶けていくことにつながりますから、喜ばしい傾向だと私は考えます。

大切なのは「子供が幸せになること」

 ここで、私がハッとさせられた児童福祉の専門家の言葉を紹介させてください。それは、「『親になる権利』というものはない」ということです。人間には「親になる権利」があるのではなく、子供の方に「幸せに育てられる権利」があるのだ、という意味です。

 子供は望んで生まれてきたり、自分で養育者を決めたりできませんから、親子になるということは、親の意思を主体に考えられがちです。しかし、本当に重視されるべきは、「子供にとって何が一番良いか」ということなのです。「『親になる権利』というものはない」という言葉は、そのことを私に気付かせてくれました。逆に、「子供を幸せに育てられるのなら、親になってはいけない人というのはいない」と私は思います。

 おめでたいニュースもある一方で、目を背けたくなるような児童虐待のニュースもあとを絶ちません。子供の幸福を主体に考え、生まれてきた子供が全員幸せになれる社会になってほしいと願わずにいられません。(宋美玄 産婦人科医)

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宋 美玄(そん・みひょん)

産婦人科医、医学博士。

1976年、神戸市生まれ。川崎医科大学講師、ロンドン大学病院留学を経て、2010年から国内で産婦人科医として勤務。主な著書に「女医が教える本当に気持ちのいいセックス」(ブックマン社)など。詳しくはこちら

このブログが本になりました。「内診台から覗いた高齢出産の真実」(中央公論新社、税別740円)。

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4件 のコメント

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何故批判が理解できないのか疑問?

疑問しかない

有里さんへ 何故製造業と比べるの? 子供が関わってることにリスクあることありますか? ミスですむよりも防ぎようのないリスクです 現時点で問題がた...

有里さんへ

何故製造業と比べるの?
子供が関わってることにリスクあることありますか?
ミスですむよりも防ぎようのないリスクです
現時点で問題がたくさん出てますよね。

ビジネスでもボランティアでも請け負う人はリスクを本当に本当に理解できてるの?


死んだり、後遺症で何かあったら実の子供たちは誰が見るの?目先だけで語ってるのは貴方の方かと。

他の仕事でも生きていけるでしょ!今まで生きてこれてきてるのだから、
貧困者全てが代理出産できる人ばかりではない。なくてもいい仕事。

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何故批判される?

有里

なのに出産に関わることは、どうしてこんなに批判されるのか。 安全第一と言われる日本の製造業などの現場作業で、毎年何人亡くなってると思う? 作業ミ...

なのに出産に関わることは、どうしてこんなに批判されるのか。

安全第一と言われる日本の製造業などの現場作業で、毎年何人亡くなってると思う?
作業ミスで頭から硫酸をかぶったとか、いまだにあるし、どこにでもリスクはあるよ?

モラル、神の領域云々。
言いたいことは分からなくもないけど。

依頼したい人の気持ち。
請け負う人の事情。
全部抜きで語れるのか?
以前批判された有名人の代理母は、食べていけるだけの収入がない貧困層の女性だったと聞く。
そんなリスクの高い事をするなんて、って言うのは簡単だけど、言う人が生活費を出してくれるの?

背景を飛ばして、目先だけで語るべき事ではないと思う。

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幸福の形と器と中身 多様な価値観と生き方

寺田次郎 六甲学院放射線科不名誉享受

多様性の許容は世代の変化もそうですが、SNSによって少数派が一定数の声を出せる集団、マスコミに取り上げられる集団を形成できるようになったことも大...

多様性の許容は世代の変化もそうですが、SNSによって少数派が一定数の声を出せる集団、マスコミに取り上げられる集団を形成できるようになったことも大きいと思います。

独身家庭から複数世帯の複合家族、他人家族まで、様々な幸福追求の形があり得るというモデルケースが共有されることで、少数派が自分の生き方を考えやすくなりました。
どういう個人や人間関係の器の形を考え、どういう幸福感を注ぐのか?

一方で、知らなかったから悩まなかった人に情報が開示されて発生する問題もできました。
全ての長所の裏側に短所がある、という構図です。

アンチコメントもありますが、キリスト教的思想の肯定や代理出産の是非以前に、我々は人間であり、産婦人科医は生死の境目の「戦場」を沢山見ているわけですから、普通と異なる価値観の許容もしやすいのだと思います。
(命や健康のために医師は手術などの異常行動を法にのっとって行うわけです。)

産婦人科医でも、医療や思想は様々で、杓子定規にガイドラインを振りかざすことが幸福を生み出すわけではありません。
ましてや、2児の母であれば、宗教や信念は命や平和程大切ではないと考えるのも当然だと思います。

個人や組織の多様な正義や価値観を受け止めるのはたかが20歳や30歳の「子供」である若い親や急性期病院の多くの医師には荷が重い事です。
日本も暴走しやすい国民性ですが、原理的規範が重くのしかかって若者の心身を潰すなら、この国に未来はないでしょう。

形にならない部分も含めて構造問題を考えることで、不幸を減らし、他人の幸福を祝う余裕のある人間を増やしていくことができます。

僕も、いわゆる望まれる医師像からかけ離れましたが、こういう事に頭をひねっているときは自分もそれなりに幸福だと思います。
若者に自分の若い頃を投影してボランティア投稿をしている不思議です。

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