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いちばん未来のシニアのきもち

医療・健康・介護のコラム

一人暮らしの高齢者 気になりますか?

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世代が違っても、生きる基本は同じ

 そうはいっても、一人暮らしが寂しくないわけではありません。不自由がないわけでもありません。不安を感じることもあるでしょう。グループインタビューでも、「寂しいですよ。それでも、やっぱり一人が気楽」という、複雑な思いの本音が出ていました。

 でもこれは、高齢者の一人暮らしに限ったことではありません。

 人は皆、自分なりの方法で、寂しさや不安や日々の不自由さと折り合いをつけながら生きていくのだと思います。それは、世代が違っても、家族と暮らしていても、同じなのではないでしょうか。

 高齢者の一人暮らしは、これから確実に増えていきます。それなら、問題を数え上げるよりも、高齢になっても快適に、楽しく一人暮らしを続けられる方法を考えた方がよいのではありませんか? 

自由に生きるためにできること

 グループインタビューでは、一人暮らしで困ることについても伺ったことがあります。

 「病気で寝込んだときは不安になる」

 「買い物した荷物が重い」

 「電球の交換が難しい」

 「時折感じる寂しさの対処」

 「ゴミ出しとゴミの分別。曜日を間違えないように出すのが大変」

 「新しい電化製品の使い方がわからない」

 こうしてみると、「病気になったとき」以外は、日常生活(それも主に家の中)での、ちょっとした困りごとがほとんどです。どれも、わざわざお金を出して、誰かを雇って頼むほどのことではありません。

 「遠くの親戚より、近くの他人」とはよく言ったもの。ご近所さんどうし「あいさつ」をする、近所にいきつけの喫茶店を作る、コンビニの店員さんと顔見知りになる、地域の活動に参加してみる……などを通して、「近くの他人」に知り合いをたくさんつくっておくのも一案ですね。

 一人暮らしを続けるために必要なのは、健康ばかりではないようです。(臨床心理士 宮本典子)

(イラスト:西島秀慎)

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宮本典子(みやもと のりこ)

 慶成会老年学研究所主任研究員。 臨床心理士。

 聖心女子大学文学部歴史社会学科人間関係(現人間関係学科)卒業。

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 主に認知症高齢者、高齢期のうつ病の心理療法及び介護家族の心のケアにかかわる。自宅で暮らす高齢者や認知症の人を対象に、情緒の安定や認知機能の低下予防をめざす心理療法プログラム「ユリの木会」を運営している。共著に「認知症と診断されたあなたへ」(医学書院)、編著に「いちばん未来のアイデアブック」(木楽舎)がある。

慶成会老年学研究所

 高齢社会に関する心理学的、医学的臨床、研究、及び教育・研修を行う研究所として、1988年に設立。現在、心理学の専門家によって、高齢者と家族を対象にしたカウンセリング、専門職や一般企業への教育・研修と、高齢者と高齢社会に関する学際的な研究を行っている。

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1件 のコメント

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八十五歳の一人暮らしは寂しい

四朗

近所に、同じ悩みを持つ女性がいます。夫が週3回の透析をうけていて、帰宅すると妻に当たり散らすというのです。妻が何でも自由にできることを妬んでいる...

近所に、同じ悩みを持つ女性がいます。夫が週3回の透析をうけていて、帰宅すると妻に当たり散らすというのです。妻が何でも自由にできることを妬んでいるようだと、二人は言います。妻を亡くした私は、彼女らに言います。「ご主人の気持ちを、もう少し理解してあげなさい」と。彼らは、治療を受けながら必死で生きようとしているのです。私の妻が逝く前に「私この先どうなってしまうんだろう」と、怯えていた日のことを思い出します。「リハビリを、頑張っているでしょう。その調子で進めば、いつか帰宅に帰れるから、心配しないでね」。妻の苦しみを、これ以上させたくないと、主治医に「これ以上、彼女を苦しませないでください」と訴えました。最後の治療を受け、妻は、御仏のお迎えを受け、旅立ちました。遺された私の一人暮らしは、本当に寂しいものです。

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