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いちばん未来のシニアのきもち

医療・健康・介護のコラム

一人暮らしの高齢者 気になりますか?

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 こんにちは、慶成会老年学研究所の宮本典子です。

 高齢者は、超高齢社会のいちばん先をいく人たちです。共に生きやすい社会をつくることは、次の世代の未来をつくることになると思いませんか?

 ご近所さんに、83歳の女性がいます。夕方になると元気に銭湯にでかけていくその方は、一人暮らし。銭湯通いは、家のお風呂掃除をしなくて済むのと、近所の友達に会えるからよいの、と楽しそうに説明してくれたことがあります。

 その女性の住むアパートの上階には、やはり高齢の男性が1人で暮らしています。週末には、窓の外の物干し 竿(ざお) に、1週間分の洗濯物が大きさ順に並びます。あまりに美しく干されているので、近くを通る時は見上げずにいられません。

 私の家の周りには、こんなふうに、いきいきと一人暮らしをしている高齢者がたくさんいます。でも、社会は、高齢者の一人暮らしを「問題」としてとらえることが多いようです。

本当は高齢者も1人で暮らしたい

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 肝心の当事者はどう思っているのでしょうか?

 一人暮らしを「よし」と思っている高齢者は、実は少なくありません。たとえば、私が立ち会った高齢者のグループインタビューでは、

 「家族に気兼ねをしなくてよいから、ラク」

 「子供たちに『迷惑をかけているなあ』と思いながら暮らすより、ずっとよい」

 「起きたいときに起きて、寝たいときに寝て、食べたいときに食べられる――幸せ」

 「他人のペースに合わせると、体が疲れてしまう」

 ……という意見が続きました。

 こうした思いを裏付ける調査もあります。

 一人暮らしの高齢者を対象にした意識調査(平成26年度、内閣府)によれば、「これから誰と暮らしたいか?」という質問に対し、「このまま一人で暮らしたい」と答えた人が全体の76.3%を占め、第1位。第2位の「子」の割合は13.4%で、大きく引き離していました。

 この結果を、パネルで紹介したことがあります。

 「一人暮らしがよいと思っているなんて、驚いた」「一人暮らしは寂しくて嫌なのだと思っていたのに…」と感想を述べる若い世代とは対照的に、高齢者の大半が「わかる、わかる」という様子だったのには、驚きながらもうれしく感じました。

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宮本典子(みやもと のりこ)

 慶成会老年学研究所主任研究員。 臨床心理士。

 聖心女子大学文学部歴史社会学科人間関係(現人間関係学科)卒業。

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 主に認知症高齢者、高齢期のうつ病の心理療法及び介護家族の心のケアにかかわる。自宅で暮らす高齢者や認知症の人を対象に、情緒の安定や認知機能の低下予防をめざす心理療法プログラム「ユリの木会」を運営している。共著に「認知症と診断されたあなたへ」(医学書院)、編著に「いちばん未来のアイデアブック」(木楽舎)がある。

慶成会老年学研究所

 高齢社会に関する心理学的、医学的臨床、研究、及び教育・研修を行う研究所として、1988年に設立。現在、心理学の専門家によって、高齢者と家族を対象にしたカウンセリング、専門職や一般企業への教育・研修と、高齢者と高齢社会に関する学際的な研究を行っている。

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1件 のコメント

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八十五歳の一人暮らしは寂しい

四朗

近所に、同じ悩みを持つ女性がいます。夫が週3回の透析をうけていて、帰宅すると妻に当たり散らすというのです。妻が何でも自由にできることを妬んでいる...

近所に、同じ悩みを持つ女性がいます。夫が週3回の透析をうけていて、帰宅すると妻に当たり散らすというのです。妻が何でも自由にできることを妬んでいるようだと、二人は言います。妻を亡くした私は、彼女らに言います。「ご主人の気持ちを、もう少し理解してあげなさい」と。彼らは、治療を受けながら必死で生きようとしているのです。私の妻が逝く前に「私この先どうなってしまうんだろう」と、怯えていた日のことを思い出します。「リハビリを、頑張っているでしょう。その調子で進めば、いつか帰宅に帰れるから、心配しないでね」。妻の苦しみを、これ以上させたくないと、主治医に「これ以上、彼女を苦しませないでください」と訴えました。最後の治療を受け、妻は、御仏のお迎えを受け、旅立ちました。遺された私の一人暮らしは、本当に寂しいものです。

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