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映画監督 大林宣彦さん

一病息災

[映画監督 大林宣彦さん]肺がん(3)一歩引くのも悪くない

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 2016年8月末、「肺がん4期で余命半年」と言われたが、佐賀県唐津市で「花筐/HANAGATAMI」の撮影を始めた。長年の念願がようやく、とのうれしさから2日間徹夜した。再検査すると、余命が半減していて改めて「3か月」と宣告された。

[映画監督 大林宣彦さん]肺がん(3)一歩引くのも悪くない

 「がんは倍々ゲームで増える。むちゃすると余命はどんどん縮む」と同市の医師に言われ、腕を組んだ。自覚症状も恐怖もない。しかし、撮影と編集に1年は欲しい。

 東京に戻って専門医の診察を受けた。早く撮影に戻りたいと伝えた。「現場にいると本当に元気なんです」と妻の恭子さん(79)も口を添えた。「では現場にお戻りください」と専門医。「その人らしく有意義に長生きしてほしい。大林さんには映画撮影だ」と考えたからだと後に聞いた。

 遺伝子検査で、がん細胞を狙い撃ちし、増殖を防ぐ分子標的薬「イレッサ」が使えることもわかった。特定の遺伝子の並び方に異常がないと使えない。その確率は約30%。使えないなら、従来型の抗がん剤を点滴で打つ計画だった。

 イレッサは1日1回口に放り込む。唐津の撮影現場に戻り、多くを若い監督補佐に任せて、無理はしないようにした。同じ肺がんだった原作者の檀一雄が口述筆記にしていた姿を思い出した。「一歩引くのも悪くないな」

 薬は効いた。1週間で肺の影は縮小した。約50日後の10月中旬に撮影は終わった。

  映画監督 大林宣彦さん(80)

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