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高血圧、新治療指針で対象拡大…米、早めの生活改善に軸足

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 米国で昨年11月、高血圧の治療指針が見直され、診断基準の数値が下方修正された。高血圧と診断される人は米国民の3割から5割近くに増えるが、多くは薬物治療の対象とせず生活習慣の見直しを促す方針だ。国内の専門家は「日本人も参考にすべきだ」としている。

高血圧、新治療指針で対象拡大…米、早めの生活改善に軸足

 米心臓協会などが発表した新たな指針では、「最高130以上または最低80以上」を高血圧と診断する。2003年に定められた従来の指針の「最高140以上または最低90以上」より基準を下げた。この結果、米国内で高血圧と診断される20歳以上は46%となり、これまでより14ポイント増える。

 ただし、薬物治療は原則、「最高140以上または最低90以上」のステージ2だった患者が対象。「最高130~139または最低80~89」のステージ1は、生活習慣の見直しが基本で、減塩、節酒、運動、肥満であれば減量、野菜や果物の摂取などを指導する。

 ステージ1でも、動脈硬化など心血管疾患になったことがあったり、10年間にそのリスクが10%以上と判定されたりした場合は、薬物治療を併用する。このため、薬物治療が必要な人は、従来の2ポイント増にとどまる36%に過ぎない。

 65歳以上の高齢者は最高「130未満」を目標とするが、合併症などで余命に限りがある場合、体の状態や患者の希望によって目標を決めてもよいという。

 血管の壁に強い圧力がかかる高血圧は、放置すると脳卒中や心臓病など命にかかわる病気のリスクを高める。自覚症状がないことから「静かな殺し屋」と呼ばれる。日本の患者は4300万人と推定され、最も多い病気の一つだ。

 日本高血圧学会で減塩委員長を務める製鉄記念八幡病院(北九州市)理事長の土橋卓也さんは「米国の新指針は、自己管理できる生活習慣を若い時から見直し、高血圧の悪化を早めに防ごうというメッセージ。日本人も生活習慣改善に役立ててほしい」と話している。

患者の背景 日本と異なる

 基準変更の主な根拠となったのは、米国立心肺血液研究所が主導し、2015年にまとめられた研究報告だ。50歳以上の高血圧患者約9400人を対象に、薬を服用し、最高を「120未満」に抑える患者と、「140未満」に抑える患者の2群に分けて経過を観察した。すると、「120未満」の方が心不全の発症率が低く、死亡リスクが27%下がっていた。

 日本高血圧学会は14年に改定した治療指針で、64歳までの高血圧の治療目標を最高「130未満」から「140未満」に緩和した。近年の世界的な緩和の流れを受けたものだが、米国で最新の研究データをもとに指針が見直されたことで、今後、日本の指針にも影響を与える可能性がある。

 ただ、米国の研究報告では心不全のリスクは下がったが、脳卒中の発症率にはあまり差がなかった。米国には、心臓に負担がかかりやすい肥満の人が多く、高血圧患者は心臓病を発症することが多いが、肥満の少ない日本人は心臓病より脳卒中のリスクが高く、患者の背景に違いがある。さらに、研究に参加した米国人患者の血圧測定は、低めの数値が出やすい静かな環境で行われていた。

 同学会で次期治療指針の改定委員長を務める横浜労災病院長の梅村敏さんは「米国人の研究結果をそのまま日本人に当てはめるのは難しい。日本で取り入れるかどうかは慎重に検討したい」としている。

 (加納昭彦)

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