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「手話言語条例」全国に広がる…2013年2自治体、今年は125自治体に

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「手話言語条例」全国に広がる…2013年2自治体、今年は125自治体に

 手話を広く使える社会を目指す「手話言語条例」を制定する動きが全国に広がっている。全日本ろうあ連盟(東京)によると、2013年の2自治体から、今年は1月16日時点で125自治体まで拡大。条例に基づいた啓発・普及活動も各地で行われる中、大阪府の取り組みが注目を集めている。未就学児から手話に慣れ親しんでもらおうと実施する手話獲得支援事業「こめっこ」だ。(松久高広)

未就学児対象、大阪府の事業が盛況

 「雪だるまの鼻は、何にする?」

 「石がいいかな」

 20日午後、大阪市中央区の府立施設の一室で、約40人の子供たちが、雪だるまの絵本を手にしたスタッフを熱心に見つめていた。

 通常の読み聞かせと異なる点は、聴覚障害のあるスタッフが絵本の内容をすべて手話で伝えていること。子供たちも大半が聴覚障害を持ち、絵とスタッフの手の動きを交互に見て、驚いたり笑顔を浮かべたり、めまぐるしく表情を変えた。

 府が昨年3月施行の手話言語条例に基づき、同6月から隔週で、未就学児を対象に開いている、こめっこの今年1回目の光景。事業名は、「交流する」の英単語の頭文字などをとって名付けた。

 この日まで計14回開かれ、毎回約2時間半、30組前後の親子が参加する盛況ぶり。手話に早い年齢から親しみ、習得してもらおうと、「大阪聴力障害者協会」(大阪市)と協力して企画した。

 重度難聴の長男(4)を連れて参加した同市北区の主婦千手綾佳さん(34)は「行政が手話にふれ合える機会を増やしてくれるのは、とてもありがたい」と喜んだ。

 このこめっこに、他の自治体から実施内容などについて問い合わせや視察が相次いでいる。2月には九州の特別支援学校の関係者も訪れる予定だ。

 こめっこが「先進的」と注目される理由は、手話の歴史が関係している。手話は日本の教育現場で戦前は「手まね」などと言われて使用を禁じられ、戦後も口話教育優先で、聴覚障害者は、健常者の口の動きで内容を読み取り、同様に発声できるよう教育された。

 それが2006年に国連採択の障害者権利条約で手話は独立した体系を持つ「言語」として位置づけられ、日本も11年に改正障害者基本法を施行し、初めて言語として明文化した。こうした国の動きを受け、各地で可決されている同条例も手話を言語ととらえ、自治体の責務として、手話を使いやすい環境整備やその学習推進を掲げている。

 ただ手話教育に詳しく、府の条例制定に関わった神戸大の河崎佳子教授(臨床心理学)は「依然、学校現場で手話は、音声言語としての日本語を補助する手段とする考えが根強く、特に未就学児の場合は、言語として体系的に学ぶ機会はほとんどない。それを行政が継続的に設ける意義は極めて大きい」と指摘する。ただ、こんな課題も挙げた。

 「滋賀県や兵庫県など遠方から参加する人もおり、各自治体も同様の取り組みを広げていくべきだ」

「手話語」高校の選択科目にも…各地で取り組み

 厚生労働省によると、障害者手帳を持っている聴覚障害者は11年、全国に約24万人いる。

 13年に全国で初めて手話言語条例を制定した鳥取県は、私立を含む県内の全小中学校、高校、特別支援学校に手話を学べるハンドブックを配布。14年からは「全国高校生手話パフォーマンス甲子園」を開催し、高校生が手話でコントや落語、演劇などを披露した。

 13年に市町村で初めて同条例を制定した北海道石狩市は市民対象の手話出前講座を始め、昨年度の受講人数は4480人に上った。市内の石狩翔陽高校では、今年度から2年生の選択科目に「手話語」を導入した。

 ただ、条例を制定しても、啓発チラシの発行や啓発イベントなど、一過性の活動で終わる例も多い。聴覚障害者の団体などは、手話を言語として学び、使っていく環境整備をより強力に進められる手話言語法の制定を目指している。

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