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どうする親の長距離転院…「同行サービス」利用も可能

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どうする親の長距離転院…「同行サービス」利用も可能

北九州市内の病院を介護タクシーで出発する女性(手前)。看護師の大橋さん(左から2人目)が埼玉県内の病院まで同行した(女性の家族提供)

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 介護や医療ケアが必要なお年寄りが、転院や転居のため地方から都市部まで片道数百~1000キロ・メートル以上移動するケースが増えている。都市部に住む子供の近くで生活、療養するのが目的で、公共交通機関のバリアフリー化が進んだことも背景にある。道中のケアや転院までの手続きを担う企業や団体には相談が相次いでいる。

  ■7時間かけ1千キロ

 北九州市の女性(89)は昨年11月、ほぼ寝たきりの状態で介護タクシーや新幹線を乗り継ぎ、長女夫婦や孫が暮らす埼玉県内の病院に転院した。

 夫婦2人暮らし。8月に女性が脳 梗塞こうそく で倒れて入院し、夫も慣れない家事と介護で体調を崩した。老夫婦にとって2人での暮らしは心細く、長女夫婦は介護で帰省する負担が重かった。家族で話し合い、転院することにした。

 病院側と相談し、長女夫婦は介護付き旅行や転院を手がけるNPO法人「あすも特注旅行班」(福岡)を利用することにした。問い合わせると、同法人代表で看護師の大橋日出男さん(43)が女性の病室を訪れて容体を確認。病院間の調整を重ね、新幹線の車内で横になれる多目的室をJRの窓口で予約し、駅までの介護タクシーなども手配した。

 移動当日、携帯用酸素ボンベや点滴も準備し、大橋さんが付き添って、おむつ交換や水分補給をしながら7時間かけて約1000キロ・メートルを移動した。家族の新幹線代を除いた費用は約12万円だった。

 現在、女性の元には毎日家族が見舞いに訪れる。長女夫婦の近くに転居して元気を取り戻した夫は「毎日歩いて妻に会いに行ける。娘や孫もいて安心」と話す。

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  ■増える問い合わせ

 この女性のように医療ケアや手厚い介護が必要な人の長距離移動に関するデータはないが、関係者は高齢化の進展で増加傾向にあるとみている。要介護者らが移動しやすいように空港内から旅客機内まで利用できる小型の車いすを導入する日本航空は「この数年でケアが必要な高齢者の利用が着実に増えている」(広報部)としている。

 長距離移動への付き添いも行う看護師専門の派遣会社「スーパーナース」(東京)にも毎月10件前後、高齢者の移動相談の問い合わせがある。プライベート看護部長の川幡民絵さんは「携帯用医療機器の進歩もあって、長距離移動が身近になったのでは」と話す。

 高齢者の介護付き旅行を扱う旅行会社「あんしんトラベル」(埼玉)にも2012年頃から月に1~2件、群馬―大阪間、青森―千葉間など高齢者の長距離移動の相談が来るようになった。手がけた約30件は、転院のほか、病院から施設、施設から施設への移動も多い。首都圏で長年暮らした高齢者が、故郷の九州の施設や病院に帰る例もあった。

「見知らぬ土地」への配慮必要

 医療や介護の必要な高齢者が同一の都道府県内や隣接県に転院するケースは多く、その際には病院の車両や民間救急車、介護タクシーなどが使われる。移動にかかる費用は多くの場合、自己負担になるが、病院や施設の看護師がボランティアで付き添う例が多かった。

 一方、長距離移動は公共交通機関を使わないと時間がかかるうえ、介護タクシーだけで移動しようとすると数十万円かかるケースもある。付き添う専門職が見つからず諦める人も多かったとみられる。

 高齢化の進展で需要が増え、長距離移動を手がける事業者は増えているが、注意も必要だ。高齢者の住まいに詳しいケアコンサルタントの川上由里子さんは、「親を自分の近くに呼び寄せれば、確かに介護負担は減らせる。ただし、見知らぬ土地に転居、転院する親へのフォローなど、退院した後の生活も含めた長期的な視野で検討することが大切」と指摘する。

 地方から都市部に転居、転院する際の注意点として、「施設入居などにかかる経済的負担は都市部の方が高い場合が多い。地域包括支援センターなどで近くの高齢者住宅や施設の情報を早い段階から調べておくとよい」と話している。

 (大広悠子)

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