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脳卒中発症から1年…電子楽器「テルミン」第一人者・竹内さん、再起の公演へ

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脳卒中発症から1年…電子楽器「テルミン」第一人者・竹内さん、再起の公演へ

アンテナに手をかざしてテルミンを演奏する竹内さん(浜松市で)=奥西義和撮影

 アンテナに両手をかざすだけでメロディーを紡ぎ出す電子楽器テルミンの国内第一人者、竹内正実さん(50)(浜松市西区)が脳卒中による右半身まひと闘いながら、21日に再起の単独公演を東京都内で行う。

 一時は腕を上げることさえできなかったが、25年前に本場ロシアに単身渡って演奏法を学び、国内で普及させた「挑戦」の人生そのままに舞台に立つ。

 垂直と水平の2本のアンテナが発する電波の空間に竹内さんが手を滑らせると、重厚なチェロや女性の歌声のような癒やしの音が響き渡る。「完成度は発症前の65%くらい。それでも精いっぱいの姿を見てほしい」。竹内さんが右腕を気にしながら語った。

 2016年12月25日のクリスマス公演の開幕直後、羽交い締めにされているような感覚に陥った。必死にこらえて舞台に立ち続け、終了後に病院に担ぎ込まれたが、音階を操る右腕がだらりとして動かなくなった。「もう演奏は無理だ」。目の前が真っ暗になった。

 子供の頃は野山の音を収録して遊ぶのが好きだった竹内さん。音響技師だった27年前、国内に本格的な奏者がいなかったテルミンの独特の響きに引き込まれた。2年後、「開拓者になりたい」と仕事を辞めて発祥の地・ロシアに渡り、発明したレフ・テルミン博士の血縁の弟子に3年間師事した。

 帰国後、演奏会を各地で開くと、愛好家が増え、楽器の製造・販売にも手を広げながら800人以上に演奏法を指導。全国上映された映画でテルミン演奏の吹き替えなども担当した。

 発症後しばらくは人前で演奏することをためらっていたが、弟子たちが「テルミン侍プロジェクト」と名付けて復活公演の資金集めを開始し、背中を押してくれた。「命が助かっただけでも喜んでくれる人たちがいる。その思いに応えたい」

 リハビリで右腕が動くようになり、繊細な手さばきを取り戻そうと習字にも挑戦。音を微妙に揺らすビブラートの感覚も少しずつよみがえってきた。

 公演は21日午後5時から、東京都新宿区の早稲田奉仕園スコットホールで開かれる。チケットは完売した。「ハードルは高いが、新曲にも挑みたい。病や困難に立ち向かう人の励みになれば」と竹内さん。新作の題名の一つは「復活」だ。

          ◇

【テルミン】  垂直と水平方向の2本のアンテナを備えた箱型の電子楽器で、1920年、ロシアの物理学者レフ・テルミン博士が発明した。ラジオ受信機の原理を応用し、アンテナに手をかざして本体内の発振器から出ている周波数を変動させ、音を出す。通常は右手で音程、左手で音量を制御する。

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