うつ病
シリーズ
死別ケア(1)夫失いうつ病 遺族外来へ
「紅葉がきれいな秋は好きでしたが、今は悲しい季節になりました」。夫(当時51歳)を胃がんで亡くした埼玉県所沢市の会社員A子さん(49)は、昨年11月下旬、色づく街路樹に目を向けてそうつぶやいた。
夫は2013年10月、健康診断の再検査で胃がんとわかった。胃を全摘する手術を東京都内の病院で受け、職場に復帰した。しかし、食欲がなく、無理に食べるともどしてしまう。抗がん剤もやめざるを得なかった。14年になると入退院を繰り返すようになった。
結婚して26年。2週間に1度は2人きりで外食を楽しむ、自他共に認めるおしどり夫婦。入院中の夫に面会時間ぎりぎりまで付き添おうとすると、夫は子どものことも気遣って「帰っていいよ」と声を掛けた。
病状は上向くことなく、がんが分かってわずか1年後の14年10月、夫は逝ってしまった。葬儀後、A子さんは、近所の人の目も避けて家に引きこもりがちに。A子さん自身も夫の死から4か月後に乳がんの手術を受けるなど、ストレスが重なった。
立ち直りのきっかけをつかもうと、もがくなかで、インターネットで以前読んだ「遺族外来」の記事が頭をよぎった。亡くなった患者の家族の話を聞いてくれるという。15年5月に埼玉県日高市の埼玉医科大学国際医療センターで遺族外来を開く精神科医・大西秀樹さんを訪ねた。
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