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五味院長の「スッキリ!体臭で悩まなくなる話」

医療・健康・介護のコラム

就活生たちへ 面接で大汗をかかない方法

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マジメな努力家に多い精神性発汗

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 新しい春を特別な気持ちで迎える人生の一コマ、就活の季節が始まります。そして、日差しが強くなるにつれて汗の季節も本格化します。まさに就活と足並み そろ えるかのように。

 面接で汗をかいたらどうしよう。自分のニオイがチェックされたらどうしよう。そう心配される学生のみなさんが来院されるのも、この季節です。緊張するだけで汗が出る。これではイケナイと思うほど汗が出る。そんな場面を想像するだけでも汗が出る。精神性の発汗、まさに心の汗です。

 私の診療所を訪れる精神性発汗の患者さんで最も多いのが、手のひらとワキに汗をかくタイプです。そして、共通する性格的特徴があるようです。みなさん一様にマジメで完璧主義の努力家なのです。

 負けず嫌いな面が強いのですが、その反面、恥ずかしがり屋であがり症な面もあります。このような性格の外向的な部分と内向的な部分が、就活の面接などの緊張場面では葛藤してしまいます。そして、交感神経が 亢進こうしん して多量の汗が出てしまうのです。

 今回は、このような緊張場面で簡単に汗を抑えられる方法を、いくつかお話ししましょう。

開き直りとゆったり呼吸が効果的

 一つは、「ロゴセラピー」という精神療法の応用です。言葉は難しいけど理屈は簡単。ロゴセラピーは逆説療法とも呼ばれ、「強く欲求すると望むものの実現を不可能にし、逃避はかえって恐れるものを出現させる」という人間の心理の逆を行う療法です。

 多汗で悩む人は、手のひらや脇の汗に意識を集中しすぎる傾向があります。その意識を汗そのものや汗をかく体の部分から遠ざけ、達観視するのです。ロゴセラピーの生みの親であるフランクルが多汗恐怖の患者に使った、「昨日はまだ1リットルしか汗をかいてない。それでは今日は10リットルばかりかいてやろう」という言葉が、逆説志向の本質をよく表しています。「汗をかくまい」と努力するのでなく、開き直ることで汗へのこだわりから解放され、汗以外のもっと大切なこと、たとえば面接者の質問などへ神経を集中することができるのです。

 次に「呼吸法」。これも大切です。発汗は自律神経によって調節され、交感神経が興奮すると汗が多く出ます。自律神経は通常、意志の力で調節することはできませんが、呼吸だけは自発的にコントロール可能。呼吸の仕方で自律神経を調節できるのです。

 ゆったりと深い呼吸をすると副交感神経が優位となり、汗が抑えられます。そのとき大切なものは呼気です。肺に古い空気が満たされている限り、どんなに吸気に力を注いでも大気から新鮮な空気をとることはできません。

 ですから、呼吸は呼気から始めます。呼気と吸気の比を2対1に保ちながら、全身の汚いものを吐き出すような気持ちでゆったりと行います。面接時なら「不安よ。出てけ!」と念じながら行うのもよいでしょう。吸気はお なか に自然と空気が吸い込まれるのにまかせます。この呼吸法で脳波はα波となり、心も落ち着いて汗が抑えられます。

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五味常明(ごみ・つねあき)

1949年、長野県生まれ。一橋大学商学部、昭和大学医学部卒。昭和大で形成外科、多摩病院で精神科に携わった後、体臭・多汗研究所を設立。現在は、 五味クリニック 院長として、東京と大阪で診療する傍ら、流通経済大スポーツ健康科学部の客員教授も務めている。

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